孤児院にいた私を引き取ってくれた養父は、ギャンブルに入り浸りの毎日で、ほとんどのお金は父のギャンブルに消えていきました。住む所はすぐに追い出され、食べるものもなく、電気もすぐに止められてしまうので、ろうそくでの生活は15歳の頃まで続きましたね。ただ、自分でそれらを苦労だと思ったことはありませんでした。自分の欲は置いておくということを、徹底的に鍛えられたのでしょう。その根本は、その後どんな局面においても、私を支え続けました。
何とか高校を卒業し、18歳で就職したのは不動産会社でした。やがて、結婚を機に独立。私たち夫婦にとって、当時の生活は何不自由ないものでした。平穏な日々の中で、どちらともなく言った「喫茶店でもしない?」この一言が大きく運命を変えることになりました。名古屋で喫茶店の一号店「バッカス」を開店し、初めてお客様がいらっしゃった時の感動は今でも忘れられません。まさにその瞬間、飲食業が天職なのだと思いました。

一号店の経営はうまくいっていたものの、二号店を出してからは苦労を強いられました。地元では当たり前のモーニングサービスをやっていなかったこと。決して値下げはしないこと。周りからすると、非常識なことだったと思います。しかし、私は「明るさ」「誠実さ」など、店の姿勢でお客様に選んでほしいと思っていましたから。お客様がいらっしゃった時には、みんなで拍手をしていたほどです。そういう気持ちで続けた結果、自然とお店は繁盛するようになりました。やがて、お店の看板メニューとしてカレーをお出しするようになったことがきっかけで、カレー専門店「CoCo壱番屋」が誕生しました。
今となっては、ここまで店舗を拡大することができたCoCo壱番屋ですが、その過程で特別大きな目標を立てたりすることはありませんでした。一日ずつ、一月ずつ、目の前のお客さまに対して一生懸命にサービスをすること。ただ、それだけのことでした。人も同じことです。大きな夢でなくていい。小さくてもいいから、はっきりとした目標を持っていてください。日々落ち込んだり、つらいことがあったりしたとしても、きっと乗り越えられるはずです。