戦争により、米穀店を失った父が始めたのは質屋でした。幼心に商売をする父の姿を見て「自分だったら、こうしてみたい」と、いつしか考えるようになっていました。その時の気持ちは今でも忘れることはありません。ワクワクと興奮。それは今でも、感じ続けていることです。高校3年生になった頃、父の商売が行き詰まりを見せるようになり、質流れとなった商品を外商で売り歩くことになりました。この時に扱っていたのが、紳士服でした。大きく見れば、これがAOKIホールディングスの原点であると言えるでしょう。

外商をするうちに、幼い頃に抱いていた気持ちが蘇りました。「紳士服を作って、売りたい」そうすることで、喜ぶ人々の姿が想像できたのです。外商で貯めたお金をもとに、長野市に篠ノ井駅前店を開店。しかし、現実は厳しいものでした。結局、完全に外商をストップできたのは、それから6年が経ち長野駅前店を開店した時でした。それからは、企業家として海外セミナーなどにも参加し、企業としての展開を戦略として打ち出せるようになってきました。店のことはすべて弟(現副会長)に任せて、私は「先見の明」を磨くことに集中。今考えると少々危ないようにも思えますが、それがなければ企業の拡大もなかったことです。
この経験も含め、その時は不安に感じていたことも、後になると「だからよかった」とすべて思えるのが不思議なことです。友人が大学に進学する中、私が同じような道へ進めなかったことが、当時は良いか悪いか分かりませんでした。しかし、「だからよかった」と思えるのは、「想いを叶える」努力を怠らなかったからこそのことです。
私の経験則から言える「思いを叶える」方法は、人格を高める努力を怠らないということ。そのためにできることは四つです。「基本」を守って生きること。「覚悟」を持って生きること。「理念」を持って生きること。「ビジョン」を持って生きること。そうすることによって、使命感が生まれます。人生は長い旅。若者の皆さんも、今していることを後で「だからよかった」と思えるよう、人格を高める努力をし続けてください。