私がこの業界で働くことになったのは、銀座テーラーの2代目社長である鰐渕正夫と結婚したこと。はじめは主婦業をやっていたのですが、バブル崩壊後、会社を経営しなければいけない状況になりました。それまでは、服飾の勉強もしていませんでしたし、経営についても素人同然でしたね。しかも負債が多く、ゼロからのスタートというよりマイナスからのスタートでしたから。仕事を始めてからは毎日が戦いで、目の前に起こることを対処することで精一杯という感じでした。とにかく服を売らなければいけないという思いが強かったので、入社3ヵ月後には営業も行うようにしたのです。でも私の場合、営業する相手は知人や友人がほとんどでした。関西出身ということもあり、企業などには知り合いはほとんどいませんでしたからね。でも、知人や友人の女性を相手にすることがきっかけとなってレディースのオーダーメイドがスタートしたのです。そのとき一番気をつけたのは、相手に友達だから買って上げようという気持ちにさせないためにも、これまでのプライドを捨てて、必死に営業をしていました。

私はよく、社員にチャレンジすること、準備は大切だと言うのですね。社会全体が変化していくなかで、ただ高い洋服を売るだけではダメ。高い洋服でも、どのように変えていくかが重要なわけです。その答えを持っているのはお客様。だからお客様から「どんな場所で着るのか」、「誰の前で着るのか」などこまかな情報を聞き出してそれに合ったものを薦めるということがオーダーの役目なのです。しっかりとした準備をしていれば、果敢にチャレンジできると思いますよ。
これから社会に出ようとする人に対しては、本当の意味で自分と向き合ってほしいと思います。これからやろうとしていることが、自分のやりたいことなのか。恋人のことを考えるように、真剣に突き詰めてほしいですね。あと、時代に合っていることをやれば成功に近いと思います。今の時代、何が必要とされて、自分には何ができるのか。そして少なくとも30歳までに自分はこうなっているという自分年表を作って、夢の実現に突き進んでほしいと思います。