人は自分が本心から選んだことに打ち込んでいると、辛さを感じないものです。私は現在の地位に就いてちょうど20年になりますが、その間、客観的には厳しい状況ばかりでした。しかし私自身が心から苦しいと思ったことは一度ありません。それは私がキャンプを愛しており、当社でキャンプ用品を製造することに生きがいを感じているからです。

私の父はロッククライマーであり、アウトドア製品をつくる会社を経営していました。そんな父の影響で、小さな頃から大自然に触れていた私は、キャンピングが大好きでした。そして大学卒業後、東京の外資系企業を経て、実家の家業である当社へ入社。その際に新規事業として、キャンプ用品の開発を始めたのです。私は自分一人しかいない部署で、１００以上ものアイテムを製造しました。

私の創造における原点は「キャンパーとして自分が欲しいものをつくること」でした。それまでキャンプ用品を本格的に扱うアウトドアメーカーは日本国内にはなく、事業は順調に伸びました。しかし私が社長に就任した１９９６年頃にはキャンプブームが終わり、人気は徐々に低迷していったのです。

そこで１９９８年からキャンプのイベントを始め、当社製品の愛好者の方々と直接触れ合う機会を数多くつくるようになりました。その結果、当社の欠点が明確にわかるようになり、販売網を整備し、流通経路を刷新することで商品の値段を下げると共に本当に欲しいモノを創り、業績を上げていったのです。

今後はキャンパー人口の底上げと、都市社会で疲れた人を癒していくために、自然と人間をつなぐ事業、つまり新たなライフスタイルの提案でアーバンアウトドアの拡大を試みていこうと考えています。それにより、都市部に住む多くの方々が、自然志向のライフスタイルを実践することにより人間性を回復できるようになってほしい。それが私の願いです。

これから社会に出ていく若い皆さんも、私がこれまでしてきたように、自分が心から好きだと思うことを仕事にしてほしいと思います。そうやって仕事に向かい、いずれ社会に貢献していくことができれば、自分にしか築くことのできない未来が待っているはずです。自分の未来は自分の手で切り拓いていくもの。だからこそ”自分が好きだと思うこと“を大切にして、生きていってください。