カレーハウスCoCo壱番屋（以後ココイチ）の１号店を始める時、私は同業者や先輩に意見を求めることはしませんでした。というのも、私自身が周りに気を使い過ぎてしまうタイプだからです。相談したからには意見を取り入れなければと、気を回し過ぎてしまうので、あえて意見を聞くことはしませんでした。生活道路に面した人通りの少ない立地での開業だったので、誰かに相談していたら、きっと反対されたことでしょう。それでもお店をオープンさせ、結果的に成功できたのは、自分達にできることを選んだことと、カレーに特化したことが大きかったと思います。

私自身は内向的な性格なのですが、それを「誠実さ」という強みに変えて、物事に取り組んできました。環境が人を作ります。つらいこともあるし、認めてもらえずに歯がゆい思いをすることもあるでしょう。それでもめげずに誠実に続けていくことで、何ものにも代えがたい「信用」を築くことができるのです。

やってみたいと思うことができたら、まずはとにかく始めてみることです。ただ、事業を続けていくのは、とても大変な道のりです。その険しい道中は、「楽しさ」を感じられないと歩み続けられないでしょう。私の場合は、お客様の笑顔を見ることが「楽しさ」でした。お店に集うお客様の笑顔が私の原点になっています。小さく始めて、目の前の目標をクリアしながら、柔軟に進んでいく。ワークライフバランスのあり方は人によって様々だし、目標の大きさもそれぞれのサイズがあって良いと思います。ただ自分が決めたことに関しては、コツコツとやり続けていくことが大切です。

一軒のカレー専門店からスタートしたココイチの店舗は、現在国内外に１４００店を超えました。目の前のことに全力を注ぎながら、何かの折には柔軟に対応できる、いい意味での 「行き当たりばったり」な経営こそ、事業を拡大していくうえで重要だと感じています。

それは人生においても同じでしょう。社会に出るということは、いわば第二のスタートです。これからは定年後のことも頭の片隅に置きながら、人生の中で起こる出来事に臨機応変に対応しながら歩んでいかなければなりません。自分の目指すべき地点を見据えつつ、３〜５年単位の「人生の中期計画」を立て、目の前のことに全力を尽くしていってほしいと思います。