非常識であれ──若者たちに対して私はそう申し上げたい。といっても無軌道なふるまいをしろということではなく、”常識“を理解したうえでわざと自分を”非常識“なポジションに置いてほしいのです。
というのも、常識にとらわれた人は”王道“を選択するでしょう? しかし、その先には競争の激しい既存領域しかない。皆が同じところに集まるから競争が激しくなって潰れるわけで、ブルーオーシャンもしくはホワイトスペースと呼ばれる競争のない領域を見つけるには、やはり人とは違う考え方が必要なのです。
当社を例に挙げると、望ましい人材はFT(金融工学)とIT(情報技術)の知識を併せ持った人物でしょうか。この二つは異なる分野ですから、片方だけを身に付けるのが普通です。でも、私たちのビジネスには両方とも必要で、別々の分野であるという”常識“にとらわれない人材こそがイノベーションを起こせると信じています。
もちろん、考えるだけでなく実行する力も必要です。それは「どの領域で実行するのがベストか」を見極める力のこと。グローバルな視野とも言えるでしょう。
日本は今、戦争や天災が原因ではない、人口減少という歴史上類を見ない事態に直面しています。少子高齢化で国内のマーケットは縮小する一方ですから、当然のごとく海外に目を向けなければならない。にも関わらず、IMD(国際経営開発研究所)というスイスの有力なビジネススクールが発表した世界競争力ランキングを見ると、日本は61ヶ国中27位とあまり評価されていないことがわかります。実際にIMDを訪ねたことがありますが、世界中から集まってきた生徒たちは、自分に有利な人脈を教室の中で築き上げていました。そうやって国際交流が盛んになる一方、日本の留学生の数は減ってきている。もうこの時点で負けていますよね。
ですから、日本の若者にはどんどん海外に出てほしいですし、そうしないと未来はないでしょう。日々環境が変化するビジネスの世界では、1から100までを予定通りに進めるのではなく、変化に合わせて軌道修正を重ねる必要があります。そのためにもグローバルな視野と、そこから生まれる多様性が必要なのです。
国際性を身に付け、常識にとらわれずに新しいビジネスを作り出す。そういう「破壊的イノベーション」を期待しています。