長年の趣味である読書をするようになったきっかけは、私が田舎育ちだということにあります。ぼんやりと星空を見上げている時に、ふと、星よりも大きく重そうな太陽や月はどうして落ちてこないのだろう? と疑問に思いました。両親に聞いたところ、「なぜだろうなぜかしら」という本を買ってくれて、そこには引力の説明が載っており、「実際に石に縄をつけて回してみよう」と書かれていたのです。私は実際にやってみて初めて、引力というものを理解できました。その経験から、本を読むとたくさんのことが学べると知り、夢中で読書をするようになったのです。
海や山へ行けばたくさんの知らない生き物がいるように、色々な場所へ出向けばたくさんの疑問に出会うことができますよね。それをまた人から教わったり、本から答えを得たりする。そうして人は賢くなっていくのだと思います。どんなことでもそれは同じ。何か一つのきっかけによって劇的に成長したり、考えが変わるということはほぼありません。学校の運動部で毎日の練習を積み重ねて技能が上がるように、様々な経験を積みながら考え方が固まっていくものなのだと思うのです。

学生の皆さんにも、社会人になる前の時間があるうちに、たくさんの人に会い、たくさんの本を読み、たくさん旅をしてほしい。好きなことがあるならば、どんどん取り組んでほしい。そうして経験したことは、自分の実になります。好きなことが見つからない人は、大学でとことん勉強してほしいですね。自分で選んだ大学でいい成績を残せる人は、自分が選んだ職業でもきっと頑張れるはずです。
人口が減少していくこれからの社会で求められるのは、労働生産性の高さ。それを実現するためには、人とは違うことを考えられる尖った人材が必要になります。だからこそ社員には、尖り続けていてほしいですね。人は誰しも、はじめは尖った三角や四角です。それが、人に合わせることを覚えていくうちに、尖りがなくなり、丸くなっていく。しかし当社の社員には、小さい丸よりも、大きい三角であってほしいのです。そして、そんな若手たちにのびのびと働いてもらうために、元気で明るく楽しい会社づくりをしたい。朝起きて、出社するのが楽しみになるような会社をつくることが、リーダーである私の役目だと思っています。