現代では、「人を叱る」ということは敬遠されがちです。ところが私はこれまで、「人に叱られる」ということを喜んで受け、それにより成長してきました。「他人が自分を叱る」ということは、自分の改善点を教えてくれているからです。指摘されたことを素直に受け入れて直していけば、自分の欠点は自ずと消えていきます。つまり、「叱られる」ことは自分のためになるということです。ですから私は、会社の代表として、常に「いい人」である必要はないと考えています。社員に対して疑問に思うことがあれば何度でも、相手がこちらの指示をちゃんと実行しているのかを問います。それは、謙虚さを持ち本音をぶつけ合うことで、社員も会社も伸びていくと思うからです。
運にも恵まれましたが、私は曲がりなりにも、当社の事業を回復させることができました。その理由のひとつですが、私は当社で様々な職種・業種を経験させて頂き、その都度、上司からお叱りの言葉を頂けたことです。会社の業績が思わしくなかったときに、私は社長に就任したのですが、お叱りの言葉を糧にしてきたことで、その経験が大変役に立ちました。経営改革に乗り出したときは寝る間もないほどの激務でしたが、私はまったく慌てませんでした。なぜなら、売上高の減少は、本業以外のことに手を広げすぎたこと等、原因がわかっていたからです。ところが追い打ちをかけるように、リーマン・ショックが到来しました。それでも社員たちはみな一丸となり、それを乗り越えていくために努力を惜しみませんでした。だからこそ店舗削減やリストラをせず、会社は数ヶ月で黒字回復を果たすことができたのです。そして、成長し現在の店舗数は700を超えています。

重要なことは、なにより現実を素直に受け入れる柔軟性です。人の意見を素直に聞くということもそうですが、社の売上げが減ったのなら、その専門分野のなかでも未開拓な部門を探せばいいと考え、車検獲得などを実行しました。会社をむやみに大きくしようとせず、地道にお客様のお役に立つことを考えていれば、商売は成り立つと思います。
若いみなさんにとっては、「辛坊して、叱られる」という経験が少ないかもしれません。しかしその先には、「成長と成功」に繋がるチャンスがあるのです。その喜びと達成感を、ぜひ知ってもらいたいと思います。