私は大学を卒業後、ソニー株式会社に就職しましたが、当時は今で言うベンチャー企業のような小さな会社。しかし気づけば、退職するまでに売上が80億円から8兆円になるまで急成長を遂げていました。この急成長はなかなか経験できることではありません。会社の規模が大きくなっていく度に、「それに負けないぐらい成長しよう」と自分自身を奮い立たせていた日々を、昨日のように思い出します。
転機となったのは40歳頃。当時最も不調だったオーディオ事業部を立て直すべく、事業部長に立候補しました。それから、いくつかの事業部長を経て、社長に就任。それには正直驚きましたが、おかげさまで厳しくも楽しみながら、任務を果たすことができました。
ソニー卒業後は、あえてこれまでの経歴の反対を進もうと考え、東京の真ん中で小さな会社を立ち上げました。現在は20社ほどのベンチャー企業をメンターとして支援しています。それは、私自身が若い頃にたくさんの大人に助けてもらった経験があったから。人は、助けられながら成長していくものです。その感謝を若い世代に循環していくことが、今の私の役目だと感じています。

当社では、社員それぞれが責任を持ってプロジェクトを進めています。みんなやりたいことがあり、それを実現するために会社というツールを活用しているという考え方です。全員に共通して言えることは、お金儲けのためではなく、やりがいや自分なりの目標を達成するために働いているということ。私はよく、社員たちと未来について話しています。未来の話ならば、全員が平等に話せますよね。みんなで笑って、希望ある未来を夢見れる会社でありたいのです。
若いみなさんには、今のうちに自分の長所を見つけてほしい。そのためにはまず、挑戦してみることです。後は短所など気にせず、長所を深め、伸ばしていけばいい。それが、何でも楽しめる大人になるための秘訣です。
現在の社会は変化のど真ん中です。例えばAIの発達によって今ある仕事はどんどん不要になっていきます。しかしそれをネガティブに捉えるのではなく、AIにはできない仕事をしようとポジティブに考えられる人材に育っていってほしいです。そんなみなさんの姿を見ることが、私にとっても大きな楽しみです。