両親が共に事業を営んでいたこともあり、学生の頃から漠然と「自分も将来は何かの商売を起こしたい」と考えていました。その足がかりとなる、あるIT企業と出合ったのは就活をしていた80年代中頃のこと。ITがまだまだ新興産業の時代です。他の業界にも会社訪問し、大手から採用通知も受け取ってはいましたが、残念ながら心底、魅力的と思えるところがなかった。そんな時に設立されたばかりのIT企業があることを知ったのです。大企業で歯車の一部として働くよりも、1人で様々なことをしなければいけない環境に身を置いたほうが将来の起業に役立つはず、これから創り上げていく新しい世界を覗いてみるのもいいかもしれないと飛び込みました。
就職先の会社は予想通り、世の中の仕組みを知り、理解し、身に付ける場になりました。34歳で役員になり、事業部門を任されたこともあって結果的に23年間もひとつの会社に務めることになったのは意外な展開でしたが、経営ノウハウを学び、多くの経営者の方達と知り合う機会に恵まれたことは45歳で起業してからも大いに役立ちました。
自分は何になりたいか。将来の完成形をイメージすることはとても大切です。すぐには思い浮かばないという人は、親御さんをはじめとする周囲の大人達をよく見て、実際に話をしてみるといいと思います。ただし先入観は禁物。おじさんってこういうものという目で見ると、余計なフィルターがかかって判断を誤ります。
大人達をあらためて観察してみると、わずかかもしれませんがこんな大人ならいい、こんなふうになってみたいと思える人がきっといるはずです。逆に、こういう大人にはなりたくないという人に出会うこともあるかもしれません。でもそれはそれで有益です。どんな生き方をするとそうなってしまうのかを考えるきっかけになるからです。いろいろなところに出かけ、大人達と話をして、そしてたくさんのことを感じ取ってください。就職してからも職場だけでなく社外のいろいろな大人と接点を持つことをおすすめします。将来の完成形に向けて次の行動を起こす手がかりを彼らは与えてくれるはずです。
完成形をイメージできるようになると、そこから逆算して短期の目標を決められるようになります。あとは実行あるのみ。今できることを全力でやるだけです。