私の飲食業との出会いは、学生時代に経験した喫茶店でのアルバイト。自分の作った料理を食べてもらい、「おいしい」と感想を聞くことができ、お金をいただける。幼い感慨かもしれませんが、それまで経験した仕事に比べ、自分で全てを完結できる飲食業に「天職」を感じ、喫茶店の開業を目指すことを決意しました。
開業資金を貯めるために始めたのがトラックの運転手です。長時間の厳しく孤独な仕事をこなす毎日の中で、唯一の楽しみだったのが夜中に宿舎の周りに来る屋台の居酒屋に立ち寄ること。店主の夫婦やお客さんとの会話に癒され、いつしか自分の夢も喫茶店から居酒屋に変わっていきました。いわば「蝶ネクタイから、ねじり鉢巻きへ」です。
修行時代を経て、1985年に焼鳥居酒屋「トリドール三番館」を開業。しかし、当時の私は一通りの料理はできても経営は素人で、仕入れの選定や資金繰りも手探り。最も苦労したのはやはり集客で、店は閑散とし、ほどなく閉店の危機に陥りました。お客様を呼ぶ方策を次々に試し、無数の失敗の中、少しでも手ごたえがあれば突き詰める。その連続で、なんとか売上を伸ばしていきました。
危機に陥った時、また新たな事業展開をする時、私を突き動かすのは「このままで終わってよいのか」という気持ちです。1号店が軌道に乗って経済的に楽になっても「自分はここでは終わりたくない、夢はもっと大きい」と、店舗展開していきました。その後、うどん専門店「丸亀製麺」のオープンと拡大、海外進出、上場と、ターニングポイントはいくつもありましたが、すべて潜在的な自分と対話し、決断してきたのです。
若い頃は、お金やノウハウはありませんが、夢に向かうモチベーションがあります。私が経営者として大切にするのも、社員のモチベーション。当社の人事は年功序列ではなく、モチベーションが高い人材には、若くても店長やマネージャー等の役職を与える方針です。また、当社はホールディングカンパニーとなり分社化を進めていますが、これもかつての私のような強い思いを持った人に経営者への道を開き、グループの成長エンジンとなってもらうためです。若い人には、夢を自分自身に問いかけ、言葉にして、有言実行を目指してほしいと思います。当社は、その夢を形にする「インキュベーター」でありたいと思っています。