私は社会人としてのスタートで、つまづきを経験しています。将来したいと思うことがなく「このまま就職してよいのか」と立ち止まってしまい、大学には5年在籍。卒業後もスポーツ店でのアルバイトを続けました。その後、人材派遣会社に登録し、派遣先となったのが、あるIT企業でした。
知識も経験もないまま飛び込んだITの世界。そこで感じたのは、新しい分野で、ルールのないところに道を作る発想と熱意です。アイデアがあればすぐに試し、失敗しても何度もトライする姿勢がありました。それまでの私は、学校も企業も、他人から見て相対的に良いとされる所に行けばよい、という発想がありましたが、自ら価値を創りだす仕事に、次第に働くことへの認識を改めていきました。就職に失敗し、いわば社会に裸で放り出されたことが、私にとって良いことだったのだと思います。
2008年、知人の紹介でミクシィに入社。当時、ミクシィはSNSのユーザー数がうなぎのぼりの時期でした。その後、利用者の減少等、苦しい時期を経験。失敗も数々しましたが、ゲーム「モンスターストライク」のプロデュースなど、新しい試みで業績を上げることができました。ITの世界は、蛇が脱皮をするように常に生まれ変わり、新しい価値を提供し続けなくては衰退していくことを実感しました。

2014年に社長に就任し、その後、新しく会社のミッションを確立しました。従来からSNSの企業としてコミュニケーションに関するミッションがありましたが、もっと広く当社の仕事を定義したかったのです。決定したミッションは「新しい文化を創る」。人々の生活を変え、新しい価値、市場を創造する企業でありたいという想いが込められています。経営者の仕事は責任が重いものですが、自分の価値基準で良いものを作ることに集中しているので、プレッシャーはさほど感じていません。
これから社会に出る皆様にも、仕事では、人がどう見ているか、他と比べてどうか、ということを気にせず、自分自身が価値があると思うことに、集中して取り組んでほしいと思います。
その際に大切なのは、失敗しても諦めず、粘り強く、しつこいくらいに目標を追い求めること。何度空振りしても、チャンスある限り打席に立ち続けることが、成功をもたらす最善の方法なのだと思います。