私は、人は25歳までが社会的な常識や知識を身に付ける、いわば人生の第1楽章だと考えています。続く第2楽章は世話をされる立場からする立場へと変化する50歳まで。人を成長させるとても重要な時期にあたります。75歳までの第3楽章は人や物をマネジメントするポジションに立つ時期です。リーダーとして組織を率いているかもしれませんし、打ち込める何かを見つけてその道に進んでいるかもしれません。その後の第4楽章は経験を活かすことに使います。自分なりにできることで社会に貢献する。それを楽しんで行えるのがこの時期です。こうして考えると、それぞれの楽章におけるあなたなりの主題が見えてくるはずです。
まもなく第1楽章から第2楽章へと進もうとしている皆さんには、新たな手習いを始めることを勧めます。専門分野以外に楽しく学べるものを見つけておくと、それを介して新たな関心事や人との出会いも生まれます。国際語を身に付けるのもいいでしょう。言語に限らず、コンピュータのプログラミングも音楽も世界に通用する国際語です。

就職は、あなたと企業との合弁事業と考えてください。あなたという固有の資産が企業と共同して目標を達成するのです。
私の場合は欧州文化に関心があったので、ヨーロッパで事業展開する可能性が高かったソニーを就職先に選びました。今の1000分の1ほどの小さな会社だった時代です。入社して最初の1年間は、伸び盛りのこの会社でどんな能力を身に付けたらいいかを考えていました。言うなれば合弁先の市場調査です。
次の1年間は入社前から計画していた海外留学に充てました。事前に「1年務めた後に自費留学をしたいので休職させてください」と申し出て、承認を得たうえでの入社だったので、それを実行したのです。復職後はヨーロッパに10年ほど駐在し、ソニー・フランスの立ち上げをはじめヨーロッパを拠点とした仕事を任されました。苦労もありましたが経験した何もかもが後の仕事に役立ちました。
皆さんも、自分という資産に投資することを忘れないでください。新入社員だからといって会社に育ててもらおうなどという考えは持たないことです。そうすれば、会社の成長に負けずに自分も成長していく大きな手応えを得ることができると思います。