いかにグローバルに活躍できる人材になるかが、今後、社会を生き抜く上で重要なテーマになるでしょう。
私も若い頃からグローバルな視点で物事を見つめ、大学卒業後には家業の旅館を継ぐため、アメリカの大学院でホテル経営を学びました。留学をした1884年当時はインターネットも普及していません。多くの外国人の中に、ただ一人の日本人として身を置きながら、初めて世界から見た日本を感じたのです。欧米の真似ばかりで、なぜ日本独自の文化を活かさないのか。外国の同級生から問われた時、何も言い返せずに悔しい思いをしたこともありました。
実を言うと、渡米前は「古いスタイルの旅館は壊して、現代風のホテルへ建て直してしまおう」と考えていましたが、帰国時には意識の変化が起きます。日本ならではの良さを活かして再生しよう、と。それを感覚を掴んだ瞬間、事業のコンセプトが見つかるとともに、目指すべき方向性が明確になりました。世界に出たことで、私のビジネスパーソンとしてのベースができ上がったと言えるかもしれません。

1991年に社長に就任して以来、当社では持続可能な競争力を大切にしてきました。仕事を楽しむからこそ、社員の本当の実力を発揮できると考え、フラットな組織体系を構築します。そのおかげで、不安定な経済環境下でも成長を続け、創業100年を超えることもできました。しかし現在、世界の一流ホテルが続々と日本市場に参入しており、大都市圏だけでなく、地方に開業するケースも珍しくありません。激しい競争を勝ち残っていくため、これまで以上に、グローバルな視点を持ちながら独自の強みを生かしていくことが重要になります。
最近の若い方々は、先の見えない状況の中で、向上心を持って取り組んでいる人が多いと感じています。ただ日本という枠組みの中で物事を考えていたら、間違いなく通用しなくなるでしょう。今後、少子高齢化で国内マーケットは縮小していくので、いかに生き残っていくかを考えれば、世界に目を向けるしかありません。海外へ行くと、日本の文化との違いに戸惑うこともありますが、混乱の中にこそ学びはあります。その経験が、本物の実力となり、ある程度のスピード感を持った成長も実現できるでしょう。ぜひグローバル視点を身に付けて、世界で活躍できる人材になっていってください。