当然のことですが、私たちの会社がなぜ存続できるのかと言えば、お客様がいるからです。だからこそ、どこまでもお客様のことを考えるということが、弊社の理念です。その際に重要なことは、通常のプロセスを踏まないということ。例えば弊社が1992年に発表した、世界初の”乗るだけで体脂肪率がはかれる体脂肪計“
は、それまで市場に存在していなかったものです。通常であれば、商品の需要がマーケティングでわからない場合、商品化には踏み切らないでしょう。ところが弊社は、社会理念などで筋が通った事業であれば、企画を通します。独創的なアイデアとは、既存のデータからは生まれません。つまりそれは、どれだけ潜在的な需要を察知できるかにあるからです。
そのように考えられるようになったのは、私が元来、社長になるはずではなかったからです。弊社
は私の祖父が興し、父に受け継がれました。しかし、私は若い頃から、調理師になりたいという夢を持っていました。ところがヘルニアを患ったため、これを断念。大学へ進学後、あるコンサル会社に就職したのです。そこではビジネスの「いろは」を習い、その時の経験は現在でも大いに活かされています。
その後、父の誘いにより入社し、アメリカへ赴任した私は、帰国後、突如として社長就任の要請を受けました。そして私は、まずタニタを再定義することから始ようと考えたのです。
その際に「商品」がキーワードとなり、弊社の存在意義とは、お客様に対して健康管理のキッカケになることなのだと思い至りました。そうして、体組成計をはじめとする各種の健康計測機器が誕生したのです。私は社長就任
時に、100億の売上げを達成することを目標にしましたが、これはすでに成し遂げました。現在は、新たな挑戦へと向かっています。
若い人たちには、これからの日本をリードするため、早い時期から海外へ出て、色々な経験を積み、自分の考えで行動できる人になってもらいたいと思います。私もアメリカへ赴任していた当時、部下の仕事と責任を全身で背負う上司を見て、大いに感化されたものです。まず独創的な仕事には、多角的に物事をとらえる視点が不可欠です。そしてそれを得るためには、豊かな体験と刺激の蓄積が必要です。そうして自分の経験から、「世の中にまだ存在していないモノ」を生み出す能力を、身につけてほしいと思います。