私にとって「仕事」とは、自分の得意な分野で、他の人がやらないようなことに挑戦し、世の人々の心を動かすこと。「この仕事は自分でしかできない」と思うような仕事でなくては、働きがいが感じられないのです。
そのような仕事観の原点は、戦後まもなく、物資が乏しい中、父とともに露店で石鹸、ロウソクなど日用品を売った体験にあります。お客さんを呼びこむため、子どもながらに試行錯誤。自分のアイデアで物が売れるのがうれしかったことを思い出します。
大学卒業後、生命保険会社に入社した時は、既存の商品を売るだけではなく、新しい事業を作り出したいと考え、個人向け中心だった保険のラインナップに、法人向けの保険を加えることを企画。財務状況を徹底的に調査した上で大企業に営業をかけ、数兆円の年商をあげる商品に成長させました。
家族が経営する当社へ移ったのは、50歳のころ。そして、バブル崩壊後の63歳の時、会社立て直しの使命を担い、社長に就任しました。そのころ社内は、このままでは沈んでいくことが明らかでありながら、危機から目を背けて何もしない、いわゆる「ゆでがえる」状態。私は就任後すぐに、取り扱い商品を3分の1に減らす決定を行い、そのうえで「脱臭炭」「消臭ポット」「消臭力」等、ニッチな商品を投入、業績を回復させることができました。その後の経営においても、市場は小さくても他に負けない分野で世界一を目指す「グローバルニッチNo.1」を旗印に経営を行ってきました。成功ばかりではありませんが、自分だからこそできる仕事をしてきたという自負はあります。
現在も、やりたいことはまだたくさんあります。2019年4月からは、カイロなど温熱事業を当社のビジネスとしてスタート。「温める=美と健康」というコンセプトで、ブランド化を推し進めていく方針で、どこまでできるか今から楽しみです。
今の若い方は大変優秀。よく勉強するし、まじめです。それだけに、もっと自信を持ってチャレンジしてほしいな、とも思います。仕事で失敗したところで、命を取られるわけではないのですから、自分の「得意」を磨き、やりたいことをどんどん試してしてください。上の世代の常識に捉われることはありません。いずれにしろ、これからの時代を担うのは、若い世代の方々しかいないのです。