コクヨの事業は「ステーショナリー」「ファニチャー」「通販・小売」から成り立っています。それぞれの事業は「はたらく」「まなぶ」「くらす」といった生活のシーンで必要な商品やサービスを提供しています。
私は創業家に生まれ、幼少期には会社はすでに紙製品メーカーとして頂点に立っていました。家には不良品のノートが置いてあったのですが、一見しただけではなぜそれが不良品なのかわかりません。しかし、よくよく見ると罫線の切れ端が一直線ではなくジグザグになっていたりするわけです。この会社はただ書くだけではなく、使う、持つ、保存するなど、さまざまな用途に沿った心地よさを提供することで価値を増すことを考えている会社なのだと幼心に感じました。そんな経験から大学卒業後に入社し、オフィス家具事業に参入するなど流通を拡大していく中で研鑽を積んでいきました。会社の役に立ちたいとの思いで全国を行脚し、何千とあった販売店を訪問。本社に現場の情報を集めました。
そうした意欲的な取り組みが認められ、晴れて副社長になったのも束の間、先代社長が亡くなり、39歳で社長に就任することになりました。狼狽するくらい驚きましたし、これからどういう経営をしていけばいいのか、結論を出すには時間がかかるだろうと思いながらスタートを切ったのを覚えています。できるだけ大勢の人たちの知見を借りていくべきだろうと考え、当時普及しはじめたパソコンを全社員に一台ずつ導入し、業界ではいち早く情報の共有化に取り組みました。その結果、社内のコミュニケーションが促進され、いろいろな商品やサービスの質が良くなりました。また、我々の仕事はただ『モノ』だけを作って売るのではなく、お客様のより幅広いニーズや期待に応えることだと捉え直すのにも役に立ったと感じています。
会長となった今、若い人たちにコクヨのブランド価値を伝えていくことが自分の役割だと考えています。これまでに積み重ねてきた歴史や成果を、そのプロセスを含めて次につなげていきたいと思っています。
何か一つでもいい、「これだけは好き」と思えるものを見つけて、それに関する知識を持つこと。そしてそれが楽しくなるレベルまで興味を持ち続けられたら素敵なことです。これからの日本で、皆さんが活躍されることを祈っています。がんばって下さい。