当社は1948年に創業し、ポンプや噴霧器の製造・販売を手掛け、発電機、除雪機、バッテリー搭載ガーデンツール、農家や園芸愛好家のニーズにきめ細かく応える製品開発により、時代ごとに新たなユーザを獲得、世界160か国の方に愛用頂いています。
私は、創業者の父の長男として、大学卒業後、他社での2年の勤務を経て入社し、35歳から77歳まで社長を務めました。キャリアを通して追い求めたのは「本物のリーダー像」。父の跡を継ぐという使命感は学生時代からありましたが、跡取りであることと、リーダーにふさわしい人物かどうかは別問題です。先代である父も見識がない者を社長にはしないという考えを何度も私に語りました。それだけに、入社後、父に仕えてきた社員が納得する実績を挙げたいという気持ちは強かったです。
まず総務・人事の担当として、高度成長期の人材不足の折、全国の学校回りに奔走。その後、営業責任者として問屋への依存状態を脱するべく、販売網を開拓していきました。常に仕事のことで頭がいっぱいで、食事の味も感じないほどプレッシャーを感じていた時もありました。
社長就任後は、海外への販路拡大で売上を倍増させましたが、大きな危機も経験します。円の急騰で海外売上が半減したのです。マーケットの変化で築いてきたものが崩れる体験は、私にリーダーの実績はもちろん、状況に翻弄されない「なぜ働くのか」という志の大切さを気づかせました。そして私は、メーカーの使命を改めて考え、「いつの時代にもお客様に喜ばれる新製品を出し続けること」を追求していったのです。業績が下がる中、理系人材獲得や研究開発、国内ユーザのニーズ調査へ大きく投資し、ヒット商品を開発。現在の日本では人口減少や少子高齢化等、グロスでマーケットを縮小させる外部状況がありますが、お客様に常に寄り添う開発力があれば新たな市場創造は可能であり、全く悲観する必要はないと思っています。
これから社会に出る若い方に持ってほしいのも、働くことへの「志」です。例えば、木材にカンナをかけている人に「何をしているのか」と質問したとき、「木を削っている」と答えるのと「良い家を作っている」と答えるのでは、仕事の質に大きな違いが出ます。誰のため、何のために働くのか、時流がどうあろうとも揺るがない答えを見つけていってください。