私が当社の社長に就任したのは28歳の時のことです。想定外の就任に「親父、賭けに出たな」と思いましたが、父の賭けを絶対に失敗させるわけにはいかないとの思いでがむしゃらに仕事に打ち込んできました。父が作ったレールに乗りたくないとの思いもありましたが、いま思うと浅はかだったと思います。たとえ目先のレールはあっても、それはどこまでも延々と用意されているわけではありません。自分で維持し、新しいレールを継ぎ足していかなくてはいけないのです。その大変さを理解したのは社長になってからのことでした。
そして「四十而不惑(四十にして惑わず)」の境地を目指し、40歳までに売上10億という目標を立てて、あらゆることを実行しました。おかげさまで縁と運とタイミングに恵まれて、目標は35歳のときに達成することができました。今後は、高齢化が進む協力会社の人材育成を手がけ、培ってきた大切な技術の継承をしていきたいと考えています。
また会社としての理想は、社長の私がいなくても機能する組織にすること。そのためにも社員間のコミュニケーションを大事にしています。若手の離職が続いたときに「もの言えぬ組織や会社ではいけない」と気づき、誰もが本音で話せる環境づくりに心を砕いてきました。一人ひとりが自分らしく成長できる会社を目指していきたいと思っています。
若い人たちに伝えたいことは2つあります。1つ目は「苦手なことにこそ向き合う」ということ。得意なことや長所を伸ばすのは仕事では当たり前。苦手なことや短所に向き合うことこそが成長の糧となるのです。
2つ目は「できる理由で答える」ということ。「できません」ではなく「〜ならできます」と答えることが大事です。できないことばかり言っていては、いつまでも仕事が進みません。できることを考えて行動する姿勢を忘れないでください。
そして大事なことは、常に挑戦の心をもって自分自身と向き合うことです。やってみたいと思ったら、どんなことでもやってみればいい。ときには失敗することもあるでしょう。しかし、失敗とは転ぶことではなく、転んだまま起き上がらないことを言うのです。痛い思いをしても、立ち上がれば、それは失敗ではなく貴重な経験です。ですから、勇気を持って行動し、転んでもその都度立ち上がりながら、良い経験を積み上げて欲しいなと思います。