父が観世流能楽師という家系に生まれ、私も幼い頃から「子方(子役)」として能舞台に立ってきました。子ども時代から好奇心が強く、「やりたい!」と思ったことにはとことん熱中して取り組んできたのです。特に海外には強い関心を持ち、大学時代にそれを実現させようと「全米能楽公演ツアー」を企画。多くの方々に賛同書をいただいたり、アメリカの大学に手紙を出して公演のアポを取ったりと、ほぼ1年間を準備に費やしました。そして4ヶ月間、全米を巡ったのです。
当時のアメリカはまさに世界一の先進国で、実際に自分の目で見た社会・経済には強い影響を受けました。そして、この旅で最も私の人生観に影響を与えたのは、行き帰りに貨物船から眺めた星空です。星の瞬く宇宙から見たら、人生はほんの一瞬。だからこそ、くよくよ悩まずにやりたいことはすべてやる人生にしようと決めたのです。
大学卒業後は「いずれ日本にもコンピューターの時代が来る」と予見し、外資系コンピューターメーカーに就職。ただハードを売るだけでないコンサルティング営業を志し、顧客企業の問題解決に取り組んできました。

その中で感じてきたのは、多くの企業が事業承継に悩んでいるということでした。そこで1991年、47歳の時に日本M&Aセンターを設立。専門的な知見とITを活用し、全国の会計事務所や地方銀行、大手証券やメガバンクとも連携しながら、M&Aを中心に企業コンサルティングを手がけています。
その中で常に大切にしてきたのは、「自利利他」の精神です。「自利利他」とは天台宗の開祖である最澄の言葉で、まず人に与えることで、結果的に自分にも利が与えられるという意味。2006年に当社がマザーズに上場した際には、自身の経営を見直すために「P・F・ドラッカー塾」に入塾し、「使命感を持つ」「社会的に正しいことをする」真意を改めて学びました。そして、これまでモットーとしてきた「自利利他」の重要性を再認識することになったのです。
当社の社員にも常々言っていることですが、若い方には「個人の幸せ」「家族の幸せ」「会社生活の幸せ」の3つを大切にしてほしいと思っています。それらを叶えるために、自利利他の精神でのびのびと働く。人生はせいぜい100年です。どうか、やりたいことをすべてやり切る人生を送ってほしいと思います。