私が社長に就任したのは2001年、42歳の時。創業者の祖父から数えて四代目にあたります。入社後、最初に配属されたのはシステム開発の部署でした。社内全体をまず知るためにも管理部門からスタートするものとばかり思っていたので意外でしたが、そこで2年にわたって積んだ経験は得難いものになりました。
なかでも勉強になったのが、真因を見抜くことの大切さです。システムに問題が生じた時、その原因となるバグを見つけただけでは解決とはなりません。なぜそうなったのか、工程を段階的に遡る必要があり、そのバグが織り込まれた真因に辿り着くまで深掘りの手を休めてはならない。これはどんな仕事をするうえでも言えることですし、仕事を離れても心に留めておくべきことだと思います。
今も私は常々、社員に「物事の真因を見極め、相手の真意を量りなさい」と言っています。人の心はちょっとした動作に表れます。それを読み取り、行動することで関係性を高めることも可能になるのです。

人生は選択と思わぬ発見の連続です。私は甲南学園の中学入学と同時に硬式庭球部に入部したのですが、常に日本一を目指すレベルの高さに付いていくことができず、高校に進学した頃から代表選手のサポート役を買って出るようになっていました。すると、それを見ていた先輩から「大学進学後も主務として残ってほしい」と声がかかり、私は主務の道を選びました。主務はスケジュール管理や学内外との連絡、交渉、経理、時にはメディアの取材依頼にも対応するなど、プレー以外のことをすべて担います。社会に出てからも通用するような、あらゆる経験を積み、3年の時には大学日本一を決める団体戦で優勝することもできました。
一昨年、当社は100周年を迎え、次の100年に向かってすでに動き始めています。新たな日常に沿った新たな視点を持つ人材を育て、次の世代へ橋渡しをする。これも私たちの大事な仕事と思い定めているところです。
皆さんはこれから社会人として長くキャリアを積んでいかれると思いますが、最初の10年間は特に重要です。人と出会い、ものの見方を養い、考え方の基本を学ぶことで、社会人としての基準を測る
”ものさし“を形成する10年になるからです。失敗を恐れることなく何事にも挑戦し、経験してください。そのためのバックアップを私たちは惜しみません。