IT業界で長く仕事をしてきましたが、はじめから「この道しかない!」と大志を抱いていたわけではありません。仕事の面白さを感じられるようになったのはずいぶん後になってから。新卒入社したのは日本アイ・ビー・エムという会社でした。
当時のIBMは新人研修期間が15カ月間もあり、プレゼンテーションの仕方や話し方、提案書や資料の作り方などあらゆる基礎を叩き込まれました。かなりハードなスケジュールだったとはいえ、給料をもらいながら勉強ができるのです。30年以上経った今も役立つとは想像すらできませんでしたが、あの時の学びが財産になりました。
現在はシスコシステムズで日本市場での中長期の成長戦略策定、企業提携、東京オリンピック・パラリンピックのプロジェクトなどを進めています。シスコで仕事をしていてつくづくいいなと感じるのは多様性を重んじている点で、人種や性別などに対する差別がないのはもちろんのこと、働き方にも多様を貫いていて、労働規約の範囲内であれば自分が最もパフォーマンスを出せる方法を選べます。国際的な調査機関から2018年働きがいのある会社№1に選ばれたのも早くから多様性を認め、その実現のためのチャレンジを日々重ねてきた結果だと思います。

チャレンジの時は今、皆さんにも訪れています。コロナ禍であらゆる物事が止まってしまったように見えるかもしれませんが、ネガティブなインシデントが起きた時はむしろ大きく動き始めていると考えたほうがいい。古いモデルが崩壊して新しいモデルが生まれるさなかに自分がいることを意識して、変化が起きてからついていくのではなく、変化を起こす側にぜひ立ってほしいと思います。
その実現のための第一歩としておすすめしたいのが、できる限り毎日新しい場所に出かけ、新しい人に会うことです。いつも同じ人たちと同じように過ごしている時間を別の場所で使うようにしてください。そこで得た情報は後々大きな意味を持つはずです。
100年以上続く企業が何万社もあるのは世界中で日本だけ、そしてそれを支えてきたのは社会との共生だと言われています。ただその一方で、日本企業は変化に弱いという一面があるのも事実です。社会と共生し、変化に対応しながら長年持続ができる。そんな新しい日本型モデルを皆さんによって創られる日が来ることを信じています。