私が当社の社長に就任したのは36歳の時。それ以来、同時多発テロ、ドットコムバブルとその崩壊、東日本大震災など、想像もつかない出来事が何度も起こりました。今はコロナ禍の最中ですが、何度も危機を乗り越えてきた経験があるからこそ、必ず乗り切れると確信しています。
経営者の仕事は大変だと言われることもありますが、私は本当に面白い仕事だと思っています。自ら多くの決定を下し、それを行動に移し、結果に対して責任を取る。それらを大きなスケールでできる仕事は他にはありません。しかし、これから社会に出る若い方々の中で、すぐに経営に携わるという方はごく少数でしょう。大半の方々は企業に就職するという道を選択するからです。
私は、今の就職活動に大きな疑問を持っています。皆が一様に大手就職サイトに登録し、同じようなリクルートスーツを着て、企業に好感を持たれるような自己P Rを作り、暗記して話す…。そうして入社した会社で、果たして自分らしく、やりがいを持って働けるでしょうか? 就活に際して、リーダーシップやコミュニケーション能力が大切などと言われますが、誰もがそれらを持っているわけではありません。別の特性、長所を持っている人もたくさんいるでしょう。無理して「就活的理想像」に合わせず、自分の地を出していけばいい。それを理解しない会社になど行かなくていいと思うのです。

しかし自分の「地」が実はよく分からないという人もいるでしょう。人間はどうしても主観偏重になりがちですし、世の中に流されていては物事の本質は見えません。そんな時、あえて自分に「余白」を作ることをおすすめします。
そのためには、まず触れる情報を減らすこと。情報過多の時代ですから、意識してムダな情報を遮断することも大切です。そして、懸命に努力している時でも、多忙な時でも、必ずふっと一歩引いてみる時間を持つこと。そうして自分の感覚を鋭敏にしておくことで、物事の本質を見極める「直感力」が磨かれるのです。
また今は、何事にも境界線を引きたがる傾向にある時代です。仕事とプライベート、自分の業務範囲、損か得か、など。自分の周りに様々な境界線を作っているはずです。しかし、「自分はここまで」というラインは引かない方がいい。境界線のある状態では成長はありません。境界を超えたところにこそ、豊かな学びがあるのです。