幼い頃から親や先生などの期待に応えようと愚直に頑張るタイプ。旧電電公社(現NTT)という、将来が保証されるような大きな組織に入ったのもそのためかもしれません。しかし、私はある思いから起業に至ることになります。
電電公社では、研究所と共同でソフトウェア開発を担当する第一期生でした。当時、UNIXやC言語の解説書すら国内にほとんどなく、手探り状態の中、プログラムが実装されていくことに喜びを感じました。そして次第に「広くプロダクトを評価してもらいたい」と感じるようになりました。
家庭にインターネットが普及した1997年、頭にあったのは「電話網とインターネットを融合させれば、世界中の人と人を結ぶコミュニケーションプラットフォームができる」という構想。尊敬する先輩の
「やりたいことをやってみろ」との言葉にも背中を押され、従業員33万人の企業から、ベンチャーへの転身。その後、独立の道を選びました。
しかし、自社開発の道は険しいものでした。売上のためあまり本意ではない仕事もしましたし、資金繰り悪化で倒産寸前になったこともあります。それらの苦難は、目先の利益より「人と人を結ぶ」という自分の理想、軸足を見つめ直す機会にもなりました。

紆余曲折の末、手掛けたのがCTI。コールセンターの通話情報とコンピュータのデータを統合するシステムです。2008年にはクラウドサービスに転換しました。システム構成の自由度、自社開発による低価格化、要望に対し無償でカスタマイズするサービスなどに評価をいただき、現在1000社超の顧客を持つまでになっています。AIやIoTなど、ネット草創期に劣らぬ技術的ムーブメントが生まれる今、企業とお客さまとの直接の窓口であるコールセンターが持つ通話記録は有益なデータの宝庫。CTIは、まだまだ可能性のある分野だと思っています。
当社の一番の強みはスタッフです。自社ブランドに誇りを持ち、社員同士尊敬しあい、お客さまからの「ありがとう」をモチベーションに、期待に応えるべく働く、一言で言えば「いい人」たち。顧客先でスタッフに褒められると何よりうれしく感じます。最近「AIで人がいらなくなる」などという声をよく聞きますが、人でなくてもできる業務をコンピュータが代替する時代だからこそ、人間同士のコミュニケーションの価値は増し「いい人」の強みはさらに生かされるのだと思っています。