ソニーを退職してインテルの代表に就任してから約2年が経過しました。この間、Covid-19を含め、世界では本当にいろいろな出来事がありました。その中で若い方に伝えたいのは、企業の在り方が大きく変化し、従来のように数字を追うだけではなく、なんのために存在するのか、その存在意義が問われる時代が訪れたということです。これまでは企業としてのヴィジョンが問われていましたが、今はヴィジョンより先に存在する目的が問われています。その存在意義を見出せない企業は、これからの時代生き残っていくのは難しいと感じています。インテルを引き合いに出すと、コンピューティングによって社会基盤を作り、地球上のあらゆる人々の生活を豊かにする、これが私たちインテルが世界に存在する意義だと考えています。
これは企業にとどまらず個人にも波及していく流れだと思います。そのために知的好奇心を磨いていくことはとても大切です。私が考える知的好奇心とは、子供の頃のように常に新しい着想を有すること、そして好き嫌いを問わず何事にも挑戦し、それを好きになろうと心がけることです。私は日本で技術開発をする人が増えてほしいと思っていまして、その際、必ずぶつかるのが既存のビジネスと新規ビジネスのバランスです。たいていの場合、新規ビジネスとは既存のものと相反しています。いわゆるディスラプターと呼ばれるもので、これが企業、そして産業全体に起きた時、多くの人はどちらを選択するかで悩みます。その時に、知的好奇心を磨いていれば、既存と新規、その両面から物事をとらえ正確に判断することができます。意識的に知的好奇心を持つことは、バランス感覚を養い、そして人生を楽しむことができる、今後社会で生きていく上でとても大切な要素だと思っています。
最後に若いみなさんにひとつの言葉を送ります。「知識は力。シェアされる知識こそ力を何倍にもする」。イングランドの哲学者フランシス・ベーコンの格言「知は力なり」。そこにインテルの創始者の1人、ロバート・ノイスが「シェアされる知の力」を足して表現した言葉です。知識、知的好奇心はもちろん重要で、これからの時代はさらにその知識をシェアしていく。シェアすることによって、知的好奇心はより広がって社会のパワーは何倍にもなります。これは文化であり意識改革です。SNS時代にこそ響く言葉ですし、シェアの本当の意味を若い方々に伝えておきたいと思います。