「チクロ」という言葉をご存知でしょうか。「チクロ」は漢字で書くと「築炉」。「炉を築く」ことが、私たちの仕事です。
実は私自身、築炉という言葉すら知らずに業界に入りました。大学を中退して仕事を探していた頃、たまたま父親から後継者がいなくて困っている築炉職人の話を聞いたのです。もともと自営志向だった私は、「自分が継げば10年後には自分の時代が来ると考えて業界に飛び込みました。」
築炉の現場は職人の世界。日々の仕事は厳しいものでした。しかし炉は、すべての製品が生まれる原点であり最終地点。それを完成させていく喜びが原動力になりました。
築炉の仕事を始めて7年後、親方の引退をきっかけに独立。しばらくは仕事がまったくなく、通りすがりに煙突を見つけると「この下には炉があるはずだ」と、飛び込み営業を続けました。小さな修理でも、自分が手がけたことがない種類の炉でも何でも引き受けていったのです。
そんな私を支えていたのは「何くそ!」という反骨精神です。独立した時も、作ったことがない炉を引き受けた時も、「うまくいくわけがない」「何でそんなことするの?」といった声が聞こえてきました。ですが、それこそが私のエネルギーとなるのです。

今年の3月、新会社「KUMINO BRICK」を立ち上げました。もともと「KUMINO(クミノ)」という木の積み木を作っている方がいるのですが、その方に「レンガでKUMINOって作れますか?」と聞かれて、即座に「やってみよう!」と。そして、耐火レンガで作ったのが「KUMNO BRICK」です。この新事業についても、やはり「ハヤシチクロがあるのに、何やってるんだ」などといろいろ言われました。しかし、初めてのクラウドファンディングでは目標金額を達成。反対されればされるほど、ワクワクして突き進んでいけるのです。
今はコロナの影響もあり、皆が足元だけを見ているように思います。「今、仕事がない」「今、お金がない」と。今の大変さにしか目を向けていないと、それを何とかできなければそこでもがき続けるしかないし、何とかできたとしても、そこで止まってしまいます。ですから、その先に夢や目標をいつも持っていてほしい。私も、世界中で「KUMINO BRICK」を楽しそうに使う人々の姿が常に頭に浮かぶから、頑張れる。夢や目標が、今の自分を動かす原動力になるのです。