私は、国際金融への強い関心と、「世界を見てみたい」という気持ちから、大学卒業後は米系のJPモルガン銀行に入社、32歳からロンドン支店で勤務しました。その後バークレイズ本店に転じて計16年英国勤務をし、アジアでの2年の後2016年に東京に戻って証券日本法人の代表となりました。
バークレイズには330年の歴史があり、金融業界の歴史はさらに古い。あらゆる事業と関連し、先達のバンカー達が膨大なインテリジェンスを積み上げてきました。それらの知性に触れながら、さらに激動の世界の新しい動きに関わることができる仕事に興味は尽きません。金融に携わって30年、未だ新たなことを学び、人と出会い、自己研鑽できることは喜びです。仮に今、私が学生として就職活動するとしても、迷わず国際金融を選ぶでしょう。
新型コロナウイルス問題をはじめ、激動する世界で、新たな社会的課題が生まれています。その中で私たちは、自然災害などに際し必要な所に迅速に資金供給するディザスターリリーフ(災害後の復興)・ファイナンス、再生可能エネルギーやSDGs(持続可能な開発目標)を推進する債券など、金融にできることを考え続けています。

必要なのは、多様な人材と多様なスキルです。以前、米国の投資銀行マーケット部門を中心に宇宙工学や物理学のトップの学生を採用する動きがありましたが、私もこれまで、哲学や医学など様々な学問を修めた社員と仕事をしてきました。一つの価値観に沿って人材を育てるのは、レールが縦割りに決まっていた時代の人材育成の在り方。今は、人材を一つのものさしで測ることはできません。当社に興味をもってくれる人たちとは、仕事の話のみならず、社会的関心などについても時間をかけて話し、共感し、どの分野で誰と仕事をすれば伸びる人材なのか、丁寧に考えていきたいと思っています。
若い皆さんには、価値観の不安定で不確実、複雑で曖昧な時代にあって選択肢が無数にあることに面白みを感じ、旧来の常識や周囲の期待の外へ飛び出してみてほしい。「失敗を恐れず」という言葉がありますが、恐れてもよいのです。恐れるからこそ万端な準備を行う。準備しても失敗はします、でも後悔はない。失敗したら、その原因を徹底分析し、次回の準備に活かせばよい。数多くの挑戦と失敗の一つ一つが、不確実な時代を生き抜く「打たれ強さ」となって身に付くはずです。