私は長く核エネルギー燃料のエンジニアとして過ごしてきました。しかし、このまま核燃料に関わる仕事をしていていいのかと思い、退職しました。その後、私の技術、能力を社会や人類に対してどうやって貢献すればいいかを考えた結果、人間の健康と地球環境保全に携わることに決めたのです。
その私の事業のひとつが電動漁船です。現在、日本の漁船ほぼすべてが化石燃料で動いています。ディーゼルエンジンの排気ガスはそのまま海に排出されますが、その汚染物質が海中の微生物を破壊してしまいます。そして今、日本や世界で恐るべき海洋汚染が進行しています。また、私は漁師町の生まれで、燃油代の高騰に悩む漁師さんたちの嘆きも身に染みて知っています。こうした状況をどうにか克服したい、その思いでこの事業に取り組んできました。電動漁船の実証実験はほぼ終了し、あとは実用化すべく準備を整えています。
電動漁船のほか、漁師さんや農家、そういった個人や中小企業で働く方々の福利厚生の充実を図る事業にも取り組んでいます。大企業に比べ、中小企業、個人事業主はあまりにも守られていない。台風が来れば網は破れ、ミカンは落ちる。その状況に、漁師や農家は対応しなければなりません。そして高齢化とともに廃業が相次いでしまうのです。この状況は絶対に変えなければいけないですし、私のような個人の企業からでも変えていけることが必ずあると考えています。

仕事とは、儲かったら良いというものではありません。触れ合うもの、人がすべて生き生きと幸せに、そして裕福になること、これが大切です。どんなに社会が進化してAIやIoTといった新技術が導入されたとしても、人間同士の付き合いや不易流行というように、変えてはいけない仕事の在り方があるのです。
これから時代が大きく変わっていくと思いますが、どんな未来であっても、自分が幸せになるためには人を幸せにしなければいけません。どれだけ多くの人を幸せにするか、それが自分に跳ね返ってくるものです。人と調和し、人のために仕事をする。そのために自分は何を考えるのか。多くの賢者がいう通り、思考は現実化するのです。そのスピードはますます早くなっています。「少年よ、大志を抱け」と言われますが、その大志は人々の幸せに根差しています。これから若い方々も、その大志を抱く方法をぜひ学んでください。