私が学習塾の仕事に興味を持ったきっかけは高校受験です。部活に打ち込み、教科の好き嫌いの差が激しく、成績は5から1まですべてあるような生徒だった私。三者面談で担任の先生に「志望校の合格は不可能」と言われ、悔し涙を流してしまいました。その時、親身にサポートしてくれたのが塾の先生でした。得意を伸ばし、苦手を克服する面倒見の良い指導で、合格に導いてくれたのです。
大学時代は学校の教師になることも検討しましたが、教育実習の際に感じた教師の雑務の多さ、教え方の自由度の少なさなどから、塾講師の方がより理想の授業を追求できると考え、学習塾の業界に飛び込んだのです。
勤めていた個別指導塾の運営会社では、プロの講師として実績と自信を得て、20代後半で教室長に就任しました。そして2010年、リーマンショックの影響で経営難に陥った会社の社長から、2校の塾の譲渡の話を持ち掛けられ、起業を決意したのです。
それまでは講師として「良い授業」をすることだけを考えていましたが、経営者には、シビアに数字を見る視点が必要となります。2013年ころ、店舗展開のペースを上げた際にキャッシュがショート寸前になるなど、経営ノウハウは失敗から学んだ面が大きいと感じます。紆余曲折はありましたが、2校でスタートした塾は、10年で27校まで拡大させることができました。

人材育成もリーダーとして重要な要素です。講師の授業スタイルには、その人の個性が必ず出ます。私は、講師を採用する時、授業の進め方に強い想い、こだわりを語ってくれる人のほうがうれしい。その個性を認めた上で、授業内容や生徒との接し方など、一定の高い品質を保てるよう業務を平準化していくのが私の役目です。生徒も従業員も、塾を理想の自分を実現するための場にしてほしいと思っています。
最近、10代、20代の若い人を見ると、ネットなどの大量の情報を前に、何を信じてよいのかわからなくなったり、ネガティブな情報から失敗を過度に恐れ、前に進めなくなったりする人が多いと感じます。変化が激しく、不確かな世の中で大切なことは「これだけは譲れない」という軸。これから社会に出る皆さまには、自分の頭で考え、自分の言葉で想いを伝え、自分でやってみて、身をもって失敗から学ぶ生き方をしてほしいと思います。