タニタでは「Healthy Habits for Happiness」をスローガンに、すべての人が自分らしく幸せに生きるための「Healthy Habits(健康習慣)」をサポートする商品やサービスを展開してきました。弊社が1992年に発表した、世界初の”乗るだけで体脂肪率がはかれる体脂肪計“は、それまで市場に存在していなかった商品でもあります。その後、筋肉量や基礎代謝量など、健康づくりに役立つ指標を盛り込んだ体組成計へと進化を遂げ、2021年にはヘルスメーター国内販売台数1億台を達成。商品の需要がマーケティングでわからない場合でも、弊社は社会理念などで筋が通った事業であれば企画を通します。独創的なアイデアとは、どれだけ潜在的な需要を察知し、お客様のことを考えた商品づくりをできているかが全てなのだと考えているからです。
そのように考えられるようになったのは、私が元来、社長になるはずではなかったからでしょう。弊社は私の祖父が創業し、父に受け継がれました。しかし私は若い頃から、調理師になりたいという夢を持っていたのです。ところが父がヘルニアを患ったタイミングを機に、自らの夢を断念しました。大学へ進学後はコンサル会社に就職し、その後、父の誘いによりタニタに入社したのです。

入社後はアメリカに駐在するのですが、突如として社長就任の要請を受け帰国。業績が低迷していたこともあり、前例に捉われることのない改革を断行していくことを決意しました。その中で生まれたのが「タニタ食堂」であり、新業態となる「タニタカフェ」の展開です。これ以外にも様々な取り組みを行い、業績は回復していきました。
2017年には、希望する社員が一度退職し、新たに個人事業主として業務委託契約を結んで働く「日本活性化プロジェクト」という取り組みを開始。目的は、働き手がやりがいを持って働き、成果に報酬面でも報いること。現代社会では「働き方改革」が話題になっていますが、とかく労働時間削減に目が向けられがちです。時としてここ一番のがんばり所で、時間を忘れるくらい熱中して働くことが成長につながるのではないかと考えているのです。
若い方々にも同じように、自分が何のために、どう働くかを真剣に考えてほしいと思っています。独創的な仕事には、多角的に物事をとらえる視点が必要不可欠。そしてそれを得るためには、豊かな体験と刺激の蓄積が必要です。若い頃から主体的に働き、多くの経験を積んでいくことで、「世の中にまだ存在していない価値」を生み出す力を身につけていってほしいですね。