私の人格形成に大きく影響を与えたのは、日本の伝統文化とアメリカ。父は観世流能楽師、母は裏千家茶道教授で「子方(子役)」として幼少時から能舞台に立ち、大学時代には「全米能楽公演ツアー」を企画、全米の大学を回りました。米国の多様性と、オープンに議論する文化、またシリコンバレーの意欲溢れる起業家たちに刺激を受け、大学卒業後は、外資系コンピューターメーカーに就職しました。
1991年、47歳の時に、M&Aのコンサルティング、仲介を手掛ける日本M&Aセンターを設立しました。日本の高齢化と企業の後継者問題の深刻化を予測し、その解決策として、米国では中小企業でも盛んに行われるM&Aが有益であると考えたからです。「成約」ではなく「成功」をゴールと位置づけ、M&Aの売り手・買い手企業双方の成長戦略策定に携わるスタイルは、創業時より一貫しています。一件でも多くのM&Aを手掛けることこそが社会貢献であるという確信の元、今日までまい進してきました。

創業から30年が経ち、M&Aは日本でも一般的になりました。そして、中小企業の事業承継問題はより深刻になっています。創業した30年前には、親子など親族承継を行う企業が8割以上ありましたが、現在は3割を切っており、3社に2社は後継者がいない状態といわれます。
昨今のコロナ禍が、その状況に拍車をかけています。2020年に全国で5万社が休廃業し、歴史ある企業が引き継がれることなく消滅しています。当社は2020年の緊急事態宣言下、県をまたいだ移動が制限される状況に対応すべく全国にサテライトオフィスを設置し、WEBセミナーやミーティングを活用し仲介・コンサル業務を継続。危機の時代こそ歩みを止めることなく、使命感を持って事業に取り組んでいます。
また、従来、サポートしてきた中小企業よりも小規模な企業・個人事業のネットマッチング事業や、シンガポールやインドネシアなどASEAN拠点を活用した海外M & A サポート、中小企業のTOKYO PRO Marketへの上場支援など、時代に合わせ、幅広いニーズに応える関連サービスの充実を図っています。最近、比較的小規模なM&Aを手掛ける中で確かに感じるのは、M&Aによる起業を検討する意欲的な若い人の姿。事業のよき部分を引き継ぎつつ、古いビジネスモデルを刷新し、魅力的に再生する若者たちの発想力に、かつて見たシリコンバレーの熱気を感じています。危機の時代を乗り越え、新たな時代を作る若い皆様の活躍を、大いに期待しています。