私は日本航空の整備士としてキャリアをスタートさせました。2018年に現在の仕事に就くまで、ほとんどの時間を整備と安全推進の現場で過ごしたことになります。飛行機の整備は組織が一丸となって取り組み、進めていく仕事です。しかし、忘れてはならないのは”個”があってこそ組織は成り立っているという点です。
一人ひとりが十分な専門知識と技術を身に付け、発揮する。それを維持することで初めて組織を高い次元で均一に保つことが可能になります。そしてこのことを各自が常に意識していなければなりません。1本のボルトを締める。その責任を担っているのはたいてい1人です。ひとつの不具合もあってはならないし、誰1人欠けてもいけないのです。
組織の中ではコミュニケーションが重要です。それには日頃から自分の考えを自分の言葉で話すこと、人の話を聞くこと。要は壁を作らず自然体でいることです。単純なようですが時に難しい。でも、それが周囲から信頼されるひとつの要因ではないかと思います。私が大事にしている言葉に『現地・現物・現人(げんにん)』があります。現場に足を運び、実際に見て、当事者に会う。これに勝るものはありません。社会に出たら、誰かに直接会い、会話することを習慣づける。それを自分に課してみるのもいいと思います。

すると、自分が熱を感じるものに出会ったり、時に「これじゃいかん」と思うようなことにも遭遇するはずです。そんな時は1人で抱え込まず、自分の言葉で周囲に発信することです。率先して動けば同じ思いを抱いた人達が集まって、大きな渦が生まれる。それがリーダーシップをとるということなのです。
デジタルネイティブと呼ばれる世代の皆さんはITスキルが高く、また、自分がいかに社会貢献できるかという意識が強い。どちらも我々の世代にはなかったものです。総合的な能力も極めて優秀だと感じますし、とりわけ女性の皆さんの元気さには目を見張ります。日本は女性活躍が遅れていると言われていますが、もう少ししたら状況が一変するのはまちがいありません。
バイオジェット燃料の活用や超音速旅客機の開発など、航空業界では今、時代の大きな変わり目を迎えようとしています。そうした潮流の中でこれから若い方々がどんな活躍をするのか、リーダーシップをいかに発揮するのか、大いに期待しています。早く成長して会社を引っ張り、社会を変えていく存在になってほしいですね。