自動車整備の勉強をして札幌日産自動車に就職した私は、42歳で株式会社クレタを立ち上げました。現在は軽自動車の専門店を地元・北海道に展開しています。軽に特化するようになったきっかけのひとつに、かつてヨーロッパを旅した時の記憶がありました。スイスのツェルマットで朝を迎えた時、車の姿はあるのにエンジン音が一切聞こえてこない。走っていたのはどれも当時まだ珍しかった、小さな電気自動車だったからです。
スイスの人達が先々を見据えた方法で積極的に環境を保護しながら観光産業を成り立たせている。その姿を目の当たりにし、いずれはこれが世界の潮流になるかもしれないと感じました。また、地元が抱える現実問題に直面したことも軽に特化する大きな要因になりました。当社の新卒採用に際し、奨学金の返済に追われながら社会に出てくる若者がたくさんいること、大学進学率が低迷していること、生活必需品である車の購入資金が子育て世代の家計を圧迫していることを知ったのです。
一方で環境対策の必要性も叫ばれています。自分にできることはないか。導き出した答えが軽自動車の普及でした。普通車から軽自動車への乗り換えは維持費の節約につながり、それを子供の教育資金に充てることを可能にします。また、環境への負荷を減らすこともできます。目指すべき方向がくっきりと見えた瞬間でした。
今後は車に限らず、別の方法でも北海道を元気にできないかを考えていきたいと思っています。当社に入社してくる人たちも最近は、特別クルマ好きというわけではないけれど、北海道を元気にするために自分も何かやりたい、大学で学んだことを生かしたいと入ってくる人たちが増えています。
その思いを実現するためにも、若いうちは自分の足場を固めるために何が必要か、何が不要かをしっかりと見定めておくことが大切です。若い世代の皆さんを見ていると、チャレンジ精神が旺盛で、ひとつのことをやると決めた時の瞬発力もある。これはとても素晴らしいことだと思っています。
時には失敗したり、挫折しそうになったりすることもあるでしょう。でも、私の経験から言えば、同じ状況が永遠に続くことはまずありません。トラブルやハプニングに、その後の飛躍のきっかけになる何かが潜んでいることだってあるのです。失敗や挫折を経験し、乗り越えたことで自分にどれほどの力がついたかは、後々わかってくると思います。