世界は今、激動のただ中にあります。コロナ禍は人間の英知で克服できると信じますが、経済、ビジネス、人々の働き方や生き方に、「ニューノーマル」が「ノーマル」になる不可逆的な変化が世界同時に起こるでしょう。
ビジネスにおいてはDX。金融業界でも理系出身者、IT技術者がトップに就任する事例が相次いでいます。あらゆる業界でデジタル技術が業務を全面的に組み替え、一部の仕事は消えてしまう。その流れは留まることなく加速しています。
「人」も変化します。最近私が着目しているのが困難の中の新リーダー像です。世界各国でコロナ対応の在り方は世論を二分しました。意見の異なる双方に共感のメッセージを送りつつ、迅速に方針や代替案を打ち出し説得的に語りかける、しなやかな指導者。特に女性リーダーの活躍に、新しい時代を感じています。
価値観が揺らぎ多くの人が戸惑う中、若い方々の姿は希望も感じさせてくれます。デジタルネイティブ世代でIT化と多様性を自然に受け入れる。就職シーンでは、以前は中央官庁や大企業を志望したかもしれない人たちが、自らの理想を実現すべく、企業規模やブランドにこだわらず、ベンチャーやNGOなどに身を投じる。その自由闊達さを、どこか羨ましさを感じながら見ています。

時折、もし私が今の時代に就職活動をしていたらどうしただろう、と考えることがあります。結論は「やはり国際金融を選ぶだろう」。金融は数百年の歴史を持ち、蓄積されたインテリジェンスは世界が危機に見舞われたときにその強さを発揮してきました。バークレイズはコロナ禍において、日本を含む世界各地の非営利団体に総額100億ポンド(約130億円)を拠出するチャリティファンドを立ち上げました。また、待ったなしのESG投資の潮流にみられるように、いま世界が抱える火急の課題の解決に金融は常に新たな役割を見出しています。未だに解決すべきことが無数にあり、使命感も知的興味も尽きることがありません。
皆さんの中には、コロナ禍で希望職種に悪影響が出て、途方に暮れている方がいるかもしれません。しかし今は立ち尽くす時ではありません。金融に限らず、どの業界も世界を知るための入り口になります。日々シンクロする世界を変える「ゲーム・チェンジャー」になるには、まずはゲームを深く知ることです。自分の興味を深く掘り下げ、心が動く方向に一歩動いてみる。間違ったら方向転換すればよいのです。皆さんが、変化の時代をたくましく、しなやかに生き抜くプレイヤーとして成長されることを願っています。