今の日本は閉塞感があるなどと世間では言われていますが、そんなことはまったくないと私は思っています。むしろ今の世の中、チャンスだらけだと感じているほどです。ましてやみなさんはデジタルネイティブ世代。アナログの過去を引きずっている大人たちは太刀打ちできないものを持っているでしょう。この先、それを活かすことができるのは本当にうらやましい限りです。
私が武蔵工業大学(現東京都市大学)の学生だった1985年当時、日本は100年続いた通信事業の独占体制が終わり、新規参入が相次ぐ一大変革期を迎えていました。アメリカではインターネットの原型となるネットワークが急速に普及し始め、私にも「ITが世の中の仕組みを大きく変えていく」という確信がありました。在学中に100以上のバイトを経験したのも、進路を考えるための経験です。社会の仕組みを肌で感じ、たくさんの人と出会い、なぜ苦労している人たちとそうでない人たちがいるのか。ITならこの状況を変えることができるのではないか。そんな思いを強くしていったのです。
そして大学を卒業後、通信事業に参入したばかりのリクルートに就職しています。理系の学生は推薦で成績順に就職先を振り分けられるのが通例でしたが、それに独り逆らって出した結論でした。リクルート入社後は、新人エンジニアとしては分不相応なほどの仕事を担当させてもらい、入社3年目には一大プロジェクトの立ち上げにも成功。獲得した最初の受注先は設立間もないマイクロソフトの日本法人でした。
30歳を過ぎた頃には事業部のトップを任されましたが、どうしてもやりたいことがあると無理を言って独立を認めてもらい、2001年にローンチしたのが総合情報サイトの「All About」です。3年でユーザー数1000万人、5年で3000万人を突破し、2005年にはJASDAQ上場を果たすこともできました。何のために事業をやっているか。ひと言で表現すれば”世直し“だと私は考えています。信頼できる情報を幅広く提供すれば、たくさんの人の役に立つことができます。それを達成できた時の喜びが、この仕事の醍醐味でもあると私は思っています。
これから社会に出る若い方々も、まずは高い目標を掲げてください。途中で間違いに気づいたら方向転換すればいいですし、わからないことがあれば大人から知恵や知識を引き出し、それを上手に応用していけばいいのです。社会をイノベーションする気概で取り組めば、その先には計り知れない可能性が広がっているでしょう。野心のある挑戦を続けてください。