祖父が創業し、2001年より代表取締役に4代目として就任しました。弊社は「暮らしを創る」を理念とし、2018年に100周年を迎えました。次の100年に向けての経営方針は、「BRAND INNOVATION(ブランド革新)~家庭用品ブランドの深化と、『食』と『暮らし』のソリューションブランドへの進化~」を掲げています。我々は、家電メーカーではなく、家庭用品メーカーです。電気を使わなくて済む「マホービン」をはじめ、サスティナブルな時代にふさわしい暮らしに向けて、現在、象印食堂の経営なども展開しています。日常の暮らしを豊かにするための家庭用品メーカーとして、今後もさまざまな象印ブランドを世界に発信してまいりたいと考えています。
私にとって「働く」とは、どんな仕事であっても最終的に誰かのためになるかどうかであると考えます。社長を努めていく上では、従業員一人一人の素質や適性を見極めながら組織を作っていくことが大切です。採用においては、最初の段階から何か特別なことを望んでいるわけではなく、あくまでも人柄重視です。
これから社会人を迎える皆さんは、「期限の決まった明確な目標」と「30~40年先を見据えた漠然とした目標」を持っていただきたいです。期限の決まった目標は、明確であればあるほど達成されなかった場合にその原因がわかります。漠然とした目標は、人生において好まざる岐路に立たされたときに、右か左のどちらに進めばいいのか判断がつきます。つまり、その最初の岐路となるのが「就職」です。
私自身、入社して最初に配属されたのはシステム開発の部署でした。「帝王学」では、「経営者は会社全体のことを理解するには、最初に経理を経験すると良い」といわれていますが、父は先見の明があったのか、「これからはシステムの時代だ。一からシステムを組めるようになれば、経理以上に会社の仕組みを把握できる」と言い、私を配属しました。そこで学んだのは、今の私の座右の銘にもなっている「真意と真因」です。表面的なバグはその場でしのげたとしても真の原因を取り除かない限りは解決しない、問題の原因は何か、その原因を作った真因は何かを追求していく――これはビジネス以外の人間関係においても大事です。
今の時代は、ひと昔前のように「同じ会社でずっと働く」ということを強いられる時代ではなく、転職すること自体は悪いことではありません。ただ、社会人としての基礎的なことは、入社してから最初の10年で身に付くため、最初に入社する会社での経験が重要です。情報や選択肢の多い時代だからこそ、学生時代から先の目標を持ち、最初に入った会社で仕事の基礎を学び、より深い人生を歩んでいただきたいです。