私が大学時代に受けた講義で今も鮮明に覚えているのが、幸福論に関する一説です。
「人は幸せになりたくて生きている。その幸せとは何か? 人は好きなことをしている時に幸せを感じるんだよ。だから君たちも好きなことを求め、探しなさい、生きがいを持ちなさい」。教授から聞いたこの言葉は、今も私の心に残っています。とはいえ学校を出ても好きなことは見つからず、安定を求めて銀行に就職。入行して営業に配属され、その1ヶ月後には「何のために働いているのか?」がわからなくなっていきました。
そんな折、ある営業先で整骨院の院長に出会いました。整骨院の仕事について尋ねると、「この仕事は人から喜ばれ感謝される素晴らしい仕事ですよ」と教えられました。求めていたものはこれだと直観し、すぐに銀行を辞めて専門学校へ入学。初めて自分の意志を持ち、スポーツトレーナーの道へと進んだのです。そして、色々な先生から「治す技術」を習得していきました。私にとって大切な事は、痛みに苦しむアスリートや、怪我などで動けず困っている方々を一日でも早く治し、アスリートのパフォーマンスを上げてあげることです。
痛みで悩んでいる人を治すと喜ばれますが、その喜びは私自身の喜びと直結していくことを実感していきました。学生時代をスポーツに捧げた方の中には、働くならスポーツに関わる仕事をしたいと思っている方も多いでしょう。とりわけ、スポーツトレーナーという職業は、大好きなスポーツに生涯関わることができる職業です。多くのスポーツ選手に喜んでもらえる職業とも言えます。
私もそうであったように、「何のために」働いているのかがわからないという学生さんも多いでしょう。その中で、人がやりがいを持って働くために大切なことは、自分がやっている事が世の中のためになっているのか? 人のためになっているのか? そうした意識を私自身も大切にしてきました。人は自分のためだけに働いていては、社会を動かすような大きな力を発揮することはできません。
私のクライアントでもある多くのオリンピアンやトップアスリートは、「応援してくれる人がいるから頑張れる」と語ります。これは人間全てに通じる真理なのです。
私たちスポーツトレーナーや柔道整復師・鍼灸師は、西洋医学で治せないものを治せるという自負があります。そうした中で、これから私たちの知識と技術はさらに注目される時代がやってくるでしょう。スポーツを愛する多くの若い方々にも、私たちの仕事がどんなものか、関心を持っていただけたら幸いです。