皆さんの中で車を購入する際、カーナビゲーションシステムやETC車載器、ドライブレコーダーなどの電子機器をはじめとしたオプションを付けられる方も多いのではないでしょうか。当社ではその取り付けや車両の塗装、コーティングなどを請け負っており、国産自動車メーカー5社との取引を実現することで安定した経営を続けてきました。
そんな私は学生の頃、今とは異なる将来を描いていたこともあります。しかし希望に合った求人を見つけられず、あえなく別の仕事に就きサラリーマンを10年ほど経験。その努力を買われ、父が創業していた当社に入ることになったのです。
当初は経営状態も良かったのですが、しばらくするとバブルが崩壊。世の中は不景気になり、他社と仕事を奪い合うという厳しい競争にさらされていきました。今振り返れば、生きるか死ぬかの時代だったと思います。家計の助けとなるように、ダブルワークでアルバイトも始めました。睡眠時間は毎日3時間ほど。それを30歳から10年間にわたり続けたのです。正直、「もうやめにしたい」と思うこともありました。しかし弱音を吐いたところで、ひたすら耐えるしか道は残されていません。そんな中でも私は、隣接する他社の取り付け作業を横目に、「どこよりも迅速に作業を行い質の高さでは絶対に負けない」という気概で仕事に臨んでいきました。

その後、父が引退し、私は40歳で現職に就任。真っ先に取り組んだことは、従業員が長く仕事を続けられる環境作りでした。当時はほとんどの社員が1年以内に辞めてしまい、それが常態化していたからです。初任給を上げたり、休暇を取得しやすいようにしたりと、一番に社員を思い試行錯誤を続けてきました。今では長く社員が定着してくれるようになり、会社の業績も回復。その後は黒字経営が続いていったのです。
現代の若い方々の多くは、「もし何かあれば今の会社から退職する」という選択肢を持っていることでしょう。しかし私の場合は、退職するという選択肢自体がありませんでした。なんとか働き、なんとか生きていくことで精一杯だったからです。せめて自分の隣にいる人には負けないようにしようという気持ちで働いてきました。その想いは今でも変わっていません。
もし皆さんも最初に思い描いた将来とは違った仕事に就いたとしても、それは決して失敗ではなく、その仕事を続けていくうちに必ず成功への道が拓くと自分自身を信じてあげてください。目の前にあるものが答えではなく、通過点の途中で見えたものでしかないのです。今やるべきことに夢中になって取り組んでいけば、きっとまた違う世界が見えてくるはずです。