私は6人兄弟の長男として、石川県に生まれました。事業家の父の背中を見て育ったせいか、ごく自然な流れで「いつか事業を起こそう」と志していたのです。また幼い頃から、お金は自分で稼ぐものだという意識が根付いており、早くから古本回収販売や自転車預かり業などを行い、自ら生計を立ててきました。
中学二年の時に父が他界し、その後就職して一家を背負うことになりましたが、事業家になるという目標を捨てたわけではありません。事業を行うには金融の知識を身に付けることが必要だと感じていましたし、転勤があると家族を支えられないことから、地元に根差した信用金庫に就職しました。それと同時に、慶応義塾大学経済学部通信教育部に入学。仕事で実践的な経験を積みながら、大学で学問を勉強するという二足の草鞋は、代え難い経験になりました。
そして信用金庫に在職中の9年間、事業家になることをずっと考え続けていました。住宅産業に将来性を見いだし、まずは全国に先駆けて長期15年の元利均等償還制の住宅ローン制度を作成。それを引っ提げ、注文住宅の販売を行う信金開発株式会社を設立したのです。お金がないと家が建てられない時代でしたから、頭金10万円で家が建つことには驚かれ、多くの依頼が舞い込んできました。
現在は建売住宅、マンション事業を経て、名前を全国に知られることになるホテル産業にまで事業を拡大。その特徴の一つと言えるのが、新都市型ホテルという新しいカテゴリーの創出でした。高機能、コンパクトを掲げ、50インチの大型テレビやシングルルームにも幅1400mmのダブルベッドを設置。その一方、省エネで運営できるホテルを次々と手掛けていったのです。それによってランニングコストが下がり、宿泊料を抑えてサービスを提供することができるようになりました。また、宿泊者の皆様が最も大切にするのは何かと考えたとき、初めに頭に浮かんだのは時間でした。その時間を節約するために、ルームキーをキーボックスに返却し、チェックアウトするという仕組みを実現。お客様のニーズを読んだ結果が、事業拡大につながったと考えています。
「二兎追う者は一兎をも得ず」ということわざがありますが、私の場合は「二兎追う者は二兎とも得る」という考えを貫き、仕事に活かしてきました。人生は短いですから、いろいろなことを同時にやらないと追いつきません。とくに若い方々にとっては、その若さが大きな武器なのです。歳を取ってから知ったのでは遅いことも多々あるでしょう。二兎を追う気概で自らの武器を存分に磨き、最大限に人生を謳歌してほしいと思います。