コロナ以降、介護業界は逆境でした。2020年3月後半には緊急事態宣言となり、まず私は全職員に対し、県外越境、会食自粛の要請、そして施設での面会制限、徹底した感染予防とできる限りのことを行いました。幸いにして大規模な感染が広がらずに済みましたが、その後すぐに利用者の介護施設離れが起きはじめました。感染予防には経費もかかり、職員たちの心身の負担も限界に来ていたところで、さらに利用者が減る。観光や飲食業界には政府の援助が入っていましたが、介護業界は取り残されたまま。これはまさに介護業界の緊急事態です。
私は介護の業界団体のトップを務めており、この危機に対して座して待つのではなく即座に手を打つべきだと奮闘しました。その年の暮れには介護報酬改定に対して厳しい判断がされると推測し、政府に働きかけ、田村厚労大臣、菅総理、麻生財務大臣、二階幹事長(いずれも当時)と直接会談し、プラス改定に導いてもらいました。
側から見れば逆境続きに見えたでしょうが、私自身、逆境だとは微塵も感じていませんでした。実を言いますとこの2年間、大変だと思ったことすらありません。これまでも事業を試行錯誤しながら行ってきました。明確な目標を持って、それに則って行動し、そして自分自身を高く評価する。これが決して屈することのない精神に繋がってきます。そして逆境にある時ほど、成功した他人をよく観察すること。コロナ禍で売上を伸ばした企業があれば、そこに着目する。何事も最初に”大変だな“と思ってしまうと、なかなかうまく行きません。そして何より自分の夢、目標を諦めないこと。諦めなければ成功のチャンスは消えません。私は交渉の場で必ず10通りの答えを準備していきます。もしそれでもその答えが通用しなかったら、諦めることなく、これでもかこれでもかと提案し続け交渉を進めていきます。諦めないとは自分を追い込むことではありません。むしろ淡々と進めていくことが本質です。
2024年には医療・介護の同時報酬改定となり、難局が予想されます。今まで以上に政府への働きかけを行っていきたいと考えています。そして2025年に行われる大阪万博が業界の指標になっていくでしょう。万博は海外進出の大きなチャンスですから、アンドロイドロボットやDX、最新デバイスを使って介護の未来を世界に提示したいと思っています。社会を変えていこう、業界を変えていこう、国を変えていこう、いずれも受け身のままでは叶いません。物事は誰かが動いて始まります。ひとりが動くことによって、周りにいい影響を与え、国が社会が変わっていきます。若いみなさんも、今後の人生をぜひ主体的に生きてください。