私は2020年4月、父の経営していた阪和総合防災を継ぎ社長となりました。当時は家族経営の小さな会社でしたが、「M&Aによりグループ化し、経営規模をどんどん拡大する」「40歳までに100億円企業」というビジョンを描き、約2年で5社を傘下に持つホールディングスへと成長しました。
経営に関わり始めた頃に年商4億円ほどだった会社は、今年度売上50億、経常利益約8億円を達成する見込みです。
これほどまでに成長・拡大にこだわるのは、ひとえに地元・和歌山の発展のためです。進学や就職により和歌山を離れた若者たちが故郷に戻りたいと思った時に、彼らが活躍できる場を用意しておきたいのです。和歌山には大企業の工場こそ多く立地していますが、和歌山発の有名企業はほとんどないのが現状です。「地元に戻るなら小さな会社で小さくまとまって働くしかない」のではなく、地元に根ざしながらも広く高く羽ばたけるフィールドで働いてほしい。そんな想いが、周囲から「信じられない」と言われるほどの成長の原動力となっています。実際に、学校が就職先として生徒に紹介してくださったり、県外の大学に進学した若者が戻って入社してくれたりという流れができてきています。
右肩上がりの成長を続ける中で、コロナ禍の影響についてはよく聞かれます。それに対しては「ほぼない」というのが私の答えです。今回のコロナに限らず、時代によって外的要因は変化するものです。何かが起こった際にその変化に対応し、戦略を考えるのが経営者である私の仕事ですから、たとえ周囲が青天の霹靂と騒ぐような状況となっても、淡々と自分の仕事を遂行するのみです。
一度決めたことは、必ずやり抜く。そう決めているから、何が起こっても、周りに何と言われようとも大きく揺らぐことはありません。外から大きな波が来るたびに方針ややり方を変えることは、表面的には変化に対応しているように見えるかもしれませんが、実は状況に呑まれ、流されているだけです。それでは、自分の目指す場所にたどり着くことはできません。
ですから、これから社会に出ていく若い人たちには「受け身になるな」と伝えたいです。ここ数年にわたり、コロナ禍により行動が大きく制限され、受け身になりやすい状況が続いていたと思います。それが自分の当たり前となってしまう前に、自分が受け身になっていないか、上手くいかないことを人や環境のせいにしていないかをよく心に問いかけて、自分の意志を持って前に進む力を取り戻してほしい。そうすれば、これからどんな荒波が来ても、自分の手で大きく人生を切り開いていくことができるでしょう。