現代では人材不足が大きな社会問題となっていますが、私が身を置く歯科業界でも同様のことが言えます。スタッフが定着せず、人の出入りが激しくなって困っているという内情もよく耳にします。だからこそ私はスタッフを預かる以上、楽しく仕事ができて、長く続けていくことが可能な環境を作ることがとても大切だと考えてきました。つまり人を大切にすることが、安定経営の必須条件だと思うのです。
当院ではこれまで、新卒採用はせずに経験者採用だけを行なってきました。他の歯科医院で苦い経験を経てから勤めていただくことで、当院の良さというものを経験者の視点からきちんと理解してもらうことができると思うからです。そうした採用が、より長く働いていく環境にも繋がっていきました。
また、スタッフには有給休暇を100%好きな日に消化するように勧めるなど、従業員満足度を上げるためのさまざまな取り組みを続けてきました。それらも経営者である私の大切な務めだと思っています。人間関係を大切にしながら、冗談も言い合えるような余裕を持った職場環境が理想的でしょう。日本一笑いの絶えない歯科医院を目指していきたいと思っています。
当院は東京駅からほど近い場所に位置し、インプラント治療に特化した歯科医院として移転開業、今年で15年目を迎えました。インプラント治療では患者さんに負担をかけない、より良い治療を施していけるよう、日々研鑽を続けています。
かつての私は、歯科医としての技量さえ伴っていれば、自分だけで経営はできるものだという自負や驕りがありました。しかし当然ながら、それは大きな間違えです。従業員あっての仕事であり、従業員あっての経営だということを、日々の積み重ねの中で幾度も実感してきました。従業員がいかに大切なのかという事実は、経営者自身が苦渋を味わって初めて理解できることなのかもしれません。
これから社会に出る若い方々にとっても、人との関係をどう築いていくかが、その後の人生を左右する重要な鍵を握ることでしょう。出会った人とのご縁を大切にしていかなければなりません。積み重ねてきた信頼が失墜するのは一瞬ですが、信頼を築くには長い時間がかかることです。信頼を得るのは簡単なことではないはずです。だからこそ日頃から心や気を配り、自分が正しいと思うことをひたむきに継続し、何より人を大切にしていかなければいけないと私は思っています。それは歯科業界のみならず、どんな業界においても言えることなのではないでしょうか。これからも患者さんやスタッフに対して最大限の敬意を払い、従業員のやりがいを大切にし、培った信頼を裏切ることのないよう努力し続けていきたいですね。