私は18歳から社会に出て働いてきました。それはキャリアを積むためではなく、生活のため、家族のために他なりません。経理などの事務仕事を地道に続けてきました。その中で結婚、出産、離婚を経験して思うことは、今の日本の現状では仕事上の男女平等は成り立っていないということです。例えば子どもが不意に熱を出してしまうケースは日常の一部ですが、保育園から電話がかかってきたとして、一体どれだけの男性がお迎えに行けるのでしょうか。パートナーの男性がいればまだしも、シングルマザーの方であれば大きな負担となってしまうこともあるのです。現代の女性にとって働くとは、常に「仕事or子ども」という二者択一に迫られている状況と言っても過言ではありません。これはあまりにも悲しい現実であり、真剣に取り組まなければいけない社会課題なのです。

私は縁あって株式会社Realizeの代表に就任し、賃貸住宅の入居前点検、鍵交換を主な事業としてきました。特殊技術を要するので容易な業務ではありませんが、一度覚えてしまえばスキマ時間で行うことができ、時間の融通も効きます。そして生活を成り立たせるだけの収入が得られる仕事として社員の成長を下支えしてきました。

事業のスタートは九州の母親たちが発端となり、それから全国へと広がっていくのですが、主に活用したのは母親たちのネットワークです。知り合いから知り合いへと「地域の母親たち」が事業に参加していただくことで、信頼できる働き手を見つけることができました。また賃貸住宅の点検や鍵交換を女性が行うことは、入居者の方々にとっても安心感に繋がり、相乗効果を生んでいます。

中でも女性たちと働き続けてきて感じることが２つあります。１つ目は女性にとって出世はさほど重要ではなく、それよりも働き続けられることが大事だということ。２つ目は女性の方は時間の使い方が上手いということです。時間の使い方に関しては女性に分があると私自身も肌で感じてきました。こうした女性ならではの特性を理解しながら、住宅設備だけでなく新たな事業も進めていきたいと考えているところです。

弊社にもシングルマザーとして働いている方が数多く在籍しています。そんな彼女たちを見て、晩御飯の用意は大丈夫かな、などと心配になったりします。例えば毎日仕事に行くのではなく、週に２日働いて、あとは家のことに専念できる、そんな環境があれば女性はもっと自由に生きられるのではないかと思うのです。

いずれにせよ、日本は母親に対する公的な制度や支援が不足していると感じています。働いていたら結婚も出産もできない、若い方にこう思わせてしまう現状は本当に変えていかなければなりません。男女均等を永遠のテーマではなく、解決可能なテーマとして、これからも活動していきたいと思っています。