働くとはなんでしょうか。お金は、「マズローの欲求」で第二段階の安全欲求で人間にとって初歩的な欲求です。お金は、食べものと住む場所を確保するために必要であって、仕事本来の動機づけではありません。では人間にとって高次元の欲求とは何か？ それは真の友情や愛情、他者への貢献といった自分の人生の幸福度を上げてくれる欲求ではないでしょうか。社会に出る際、自身にとって働くことの目的が何かを理解できているか否かで、その後の人生に大きな違いが生まれるはずです。

とはいえ自分自身を振り返ると、学生の頃は誇れるものは何一つない自分がいました。就職活動中に受けたベンチャー企業の最終面接に落ちるなど「自分の人生でやるべきことは何か？」と自問自答し、５年間で起業し、一大事業を成し遂げると覚悟を決め、不動産業界を選びました。

私が社会人のスタートを切った不動産業界は当時、住宅情報へのアクセスが今ほど使いやすいものではありませんでした。住まいは、人生で一番高い買い物となるにも関わらず、消費者目線が不足していたのかもしれません。私が新卒入社から３ヶ月が経った頃、不動産業界から求人広告業界に異動になりましたが、５年で起業することを決めていたので、とにかく仕事に没頭しました。仕事では自分の判断にブレが起きないよう、迷ったら自分にとって厳しい道を選ぶなど、いくつかのマイルールを課していました。

入社から４年後、自分の決意を形にすべく起業し、１９９５年に不動産業界の情報の非対称性を解消するサービス、現在のLIFULL HOME’Sをスタートしました。住宅情報をデータベース化し、透明性の高い情報をお客様に届けていきたいと思ったからです。それがLIFULLの根幹となる事業となっていきました。

事業を作っていく中で最も力を発揮したのは利他の精神です。例えば、目の前で家族が車に轢かれそうになったら咄嗟に身を投げ出すでしょう。人間には本来、利他の精神が宿っているのです。私たちは自社の利益だけを求めるのでなく、ユーザーや不動産会社、さらに世の中にとって良いのものは何かを本気で考えながらサービスや事業を行っています。

LIFULLは、創業期から「利他主義」を社是に掲げ、事業を通して社会課題の解決に取り組んでいます。現在、住まい領域では、住まい探しに困難を抱える「住宅弱者」と呼ばれる方々に対して、親身になって住まい探しの相談に応じる不動産会社を検索できるサービス「FRIENDLY DOOR」を提供したり、全国の空き家の活用を軸とした地方創生事業にも取り組んだりしています。

人は成長するにつれ、自己を超えたところに喜びを見出します。自分の生涯を通じて頑張ったことで人が喜び、世界が良くなっていく。こうした想いを胸に、社会に出ていってほしいと思います。