私は新卒で地元企業である札幌日産自動車に入社し、5年目には会社に在籍しながら、青年海外協力隊としてマレーシアで自動車整備専門学校の立ち上げに携わりました。当時、山中のジャングルで暮らす地元の方と交流した際には、過酷ともいえる環境で暮らす彼らが身を削って子供に教育費をかけ、アメリカの大学などで教育を受けさせる現実を目の当たりにしています。そうしなければ、一族はそこで終わってしまうという厳しい生存環境下で生まれた危機感ゆえでしょう。
しかし日本は、そこまで身を削らずとも何とか生きていくことも可能ですし、大変恵まれた国だと言えます。これまで生きてきた環境がどれだけ恵まれてきたのか、自分の得てきた価値に改めて気付くことができた経験でもありました。
その後、バブル崩壊の影響で地元北海道も不況に陥ることになります。42歳だった私は独立を決意し、軽自動車に特化した自動車販売業を始めました。降雪量の多い北海道では車が必需品であり、排気量の多い大きな車が好まれてきましたが、軽自動車は購入費用や維持費が他の車種と比較して抑えられるため、家計への負担が小さくなるというメリットがあります。軽自動車を普及させることで、北海道の地元の人々の生活や教育の向上に繋がると信じて仕事を続けてきました。

当社が行っている社会貢献活動の一つに、北海道の子供たちを対象とした、北海道大学への見学バスツアーがあります。実は北海道の高校卒業者の大学進学率は全国平均と比較しても低く、さらに北海道大学への入学者は道内出身者が3割ほど。非常に狭き門となっている現実がありました。北海道の地方にいれば、そもそも北海道大学を身近に感じる機会も持ちにくく、そこを目標に頑張ろうという気持ちも起きにくいという方も数多くいらっしゃいます。物価高の中、生活も大変というご家庭では、子供の学ぶ意欲を育てるところにまでお金をかける余裕はなかなか持てないでしょう。そんなご家庭の子供たちが、当社の活動を通じて自分の将来に対して大きな可能性を感じてもらえる機会になればいいと考えてきたのです。
北海道の人の地元に対する肯定感は非常に低いと感じています。むしろ外国の方や北海道以外の日本人の方が、北海道愛が強いのではないでしょうか。だからこそ若い方にぜひ伝えたいことは、向上心を育てることと共に、今自分の置かれている環境の素晴らしさや持てる可能性に改めて目を向けてほしいということです。足りない、足りないと求め続けるよりは、自分が提供できる価値や必要とされる場所に気付くことが大切なのではないでしょうか。今の自分でもやれることがたくさんあるはずです。ぜひ大きな自信を持って挑戦を続けてください。