私はスウェーデン生まれのスウェーデン人です。森と街が交互に現れるような古い街で、澄んだ空気と緑に囲まれて育ちました。しかし、この美しい自然は無条件に手に入るものではなく、努力して維持するものなのだと多くの大人たちから教えられてきました。
元来、母親にはinclusive(多様性の受け入れ)の意識が根付いており、世界で起きていることを自分の一部として理解しようとしていました。そうした姿勢はとても印象的であり、そのおかげで私も小さな社会で生まれ育ちながらも、世界で起きることを自分事として捉えていく考え方が当たり前にありました。そして世界の事象に対する根強い関心を抱き続けることができたのです。
そんな私が9歳の時に、原子力発電に関する住民投票がありました。原子力拡大へ突き進むべきか、減速すべきなのかを国民に問う重要な投票です。幼かった当時の私には大変難しいテーマだったかもしれませんが、母は「これはあなたの未来のことなのよ。あなたに、その決定の一部に参加して欲しいの」と言いました。

そして私たちは共にリサーチを行い、ディベートに耳を傾け、自分の意思を決定したのです。そうした経験は幼い私にとってとても大きな出来事であっただけでなく、その後の人生の糧となっていきました。
ここでリーダー論として、当社のビジョンを紹介できればと思います。「より快適な毎日を、より多くの方々に」というシンプルかつ明瞭なビジョンなのですが、これはイケアのビジネスアイデアの根源であり、文化であり、価値そのものだと言っても過言ではありません。
我々はこのビジョンに従い、採用や意思決定を行い、課題解決をし、数多くの事業を推し進めてきました。ビジョンが全社的に共有されていれば、例え他国であっても従業員同士の結びつきは強くなっていくものです。
そのため私たちは、「私」という一人称はあまり使いません。なぜなら協力し連帯して働くことに重きを置いているので、例えば誰かが何かを成し遂げたということよりも、チームみんなで達成したという点に喜びを見出しているからです。これもイケアの文化が表れた一例と言えるでしょう。
最後に若い皆さんへメッセージを贈りたいと思います。「Be who you are. Be who you want to be」。その意味は、「誰でもないあなただけになってほしい」、「あなた自身が持っているものを大事に」、「あなたがなりたいあなたになってほしい」ということです。職場でもプライベートでも他者と異なること、他者と異なる意見を持っていることこそ大切にしてほしいと考えています。
ぜひ自分自身の価値を追求する生き方や選択を行い、喜びに満ちた人生を突き進んでください。