人は自分が本心から選んだことに打ち込んでいると、辛さを感じないものです。私は現在の地位に就いてから25年以上が経ちますが、その間、客観的には厳しい状況ばかりでした。しかし、私自身が心から苦しいと思ったことは一度もありません。辛さとは無縁だったのです。それは私がキャンプを何より愛しており、当社でキャンプ用品を製造することに生きがいを感じているからに他なりません。
私の父はロッククライマーであり、登山用品をつくる会社を経営していました。そんな父の影響もあり、私は小さな頃から大自然に触れながら幼少期を過ごしてきました。幼い頃から野遊びが大好きだったのです。
そして大学卒業後、東京の外資系企業を経て、実家の家業である当社へ入社しました。その際に新規事業として始めたのが、キャンプ用品の開発事業です。私は自分一人しかいない部署で、100以上ものアイテムを開発。とにかく一心不乱に自分の選んだ道に没頭していきました。
私の創造における原点は「キャンパーとして自分が欲しいものをつくること」。それまでキャンプ用品を本格的に扱うアウトドアメーカーも日本国内にはなかったため、事業は順調に伸びていきました。しかし私が社長に就任した1996年頃には、キャンプブームが終一時終焉を迎えてしまいます。人気は徐々に低迷していったのです。

そこで1998年からキャンプのイベントを始めるようになり、当社製品の愛好者の方々と直接触れ合う機会を数多くつくるようになりました。その結果、当社の欠点が明確にわかるようになり、販売網を整備し、流通経路を刷新することで商品の値段を下げると共に、本当に欲しいものづくりを追求していったのです。その結果、業績も上がっていきました。
キャンプを通じて、自然の尊さを五感で感じる人を増やし、つないでいくことが私たちの存在理由です。近年は世界規模で情報化が加速し、人々のストレスも増大していると感じています。だからこそ、それを癒す自然体験が求められているのです。自然がくれる幸せな野遊び体験をきっかけに、人間性を回復できるようになってほしい。それが私の願いでもあります。
これから社会に出ていく若い皆さんも、私がこれまでしてきたように、自分が心から好きだと思うことを仕事にしてほしいと思います。そうやって仕事に向き合い、いずれ社会に貢献していくことができれば、自分にしか築くことのできない未来が待っているでしょう。自分の未来は自分の手で切り拓いていくものなのです。だからこそ、”自分が好きだと思うこと“を大切にして、その信念を貫き続けながら力強く生きていってほしいと願っています。