アメリカのサンフランシスコに創業のルーツを持つシスコは、日本ではいわゆる外資系企業にあたりますが、約30年間日本でビジネスを展開していますので、この国の経済成長に貢献できる企業でありたいと思っています。
私は現職に就く前、アジアパシフィック ジャパンチャイナ地域のセキュリティセールスを統括するマネージングディレクターを務めていましたが、その経験を通じて、あらためて日本の素晴らしさ、よさも体感することができました。日本は、0から1を生み出すことは苦手と言われている一方、いったん自分のものにするとオリジナリティを付与し、素晴らしいものをつくることができる。IT業界でも同様です。規格を整えてものづくりをし、かつ完成度が高い。実際、日本製品が好きな海外の方は非常に多いのです。まさに日本の強みと言えるでしょう。
私が社長に就任した際、自律分散型の組織づくりを目指していきたいとお話させていただきました。言い換えると、皆同じでなくていいということです。
異なる意見や経験をもつ人たちが自ら考え、行動する。協働することでつながり、お互い成長していく。実は、もともとシスコは異なるプロトコルのルーターをコンピューターにつなげる「マルチプロトコルルーター」がつくられたことが創業の端緒です。つまり、「異なるものをつなぐ」ことはシスコのDNAといえるのです。
また、社会に大きな価値をもたらすイノベーションは、ユニフォーミティ(同一性)からではなく、ダイバーシティ(多様性)から生まれると私は思っています。例えば、ディスカッションでは発言するのが得意な人とそうではない人がいます。しかし、発言が少ない人は何も考えていないわけではありません。熟慮した後のアウトプットには大きな価値があることも多いのです。このようにタイプの違う人たちが、しっかりと違う形で評価されることが必要だと思います。
中国の故事に由来する「人間万事塞翁が馬」という言葉があります。生きていると、一見いいと思えたことが不幸に変化したり、あるいは逆の出来事が起きることもあります。私もキャリアを歩む上で「なぜこんな経験をしなければいけないのだろう」と思ったことがあります。しかし振り返ると、当時の経験が後に生きた実感もあり、「大きな学びの機会をもらった」と思えるようになったのです。
難しい局面であったり、失敗だと思われるようなことでも、向き合っていくことで道を切り拓けることもあります。短期的な損得のためではなく、若い方々には積極的に挑戦をしてもらいたいと思います。
そして、自分がどのような人間かを見定めることも重要です。人と違っていい。同一性に流される必要もない。自分の軸となるものを見つけ、人生を歩んでいただきたいです。