私は土木建設業を営む家で生まれ、小さい頃からよく父に連れられて現場を見に行きました。何もない場所に道路や公園が徐々に出来上がっていく様子に感動し、私も家業を継いでこの仕事がしたいと思うようになったのはこの頃からです。高校卒業後は土木の専門学校に入り、その後は元請会社に就職。現場監督として経験を重ねてから家業である渡辺ブルドーザに入社しています。
私が社長に就任したのは、会社が一番経営的に厳しいときでした。祖父、父と頑張って繋いできたこの会社をつぶすわけにはいかない、私が何とかするという覚悟で社長業を引き受けています。今まで取引のなかった会社を回り毎日営業をかけ、現場にも出て仕事をしました。必死の思いで走り続けた日々が2年程続いた頃には依頼も増え、また国から依頼される公共事業も手掛けるようになっていきました。そして会社の業績も上向きになっていったのです。

私が代表になったときに特に重視したのは、若い人が働きやすい職場環境作りでした。年齢関係なく能力がある人が上に行けるように組織体制を抜本的に変え、従業員の給料も上げました。この業界の10年後20年後先は今の若い人たちにかかっていますから、大切に育てていかなければと思ったからです。実際に現場の仕事では、エアコンが完備された重機の中で好きな音楽を聞きながら運転することもできますし、ドローンを使用して測量を行い、そのデータを機械へ取り込んで効率的に仕事ができたりと、働き方は徐々に変化してきました。そのため当社では女性も重機に乗って活躍しています。今後も建設土木業界に若者が安心して意欲的に働けるよう、日々思考を凝らしていきたいと思っています。
当社のメイン事業は、富士山の護岸工事を起点とした公共工事です。毎年山肌から大きな石や大量の土砂が崩れ落ちているため、土石流が麓まで流れてしまわないよう、砂防堰堤を作る工事を50年以上行ってきました。また東日本大震災をはじめ、災害時の復旧活動にも力を入れています。能登半島地震の際も、現地で2週間程災害復旧活動に従事し、国交省から表彰していただきました。「困ったときはお互いさま。まずは自分がやる」という気持ちを大切にしていきたいのです。
さまざまな不安を抱えながら社会に飛び立とうとする若い方々も多いと思いますが、安心して社会に飛び込んでいただきたい。やる気があればどんな壁も乗り越えることができます。綺麗なスーツを着てやる仕事だけが仕事ではないですし、人の見えないところで頑張っている人間がいるからこそ、この世界は成り立っています。ぜひ縁の下の力持ちになり、誇りを持って仕事をしてほしいのです。そして自分を信じてどこまでも突っ走ってください。私はそんな若者を応援し続けます。