私は大学卒業まで、いわば敷かれたレールの上を走ってきた感覚でした。周囲から言われるままに中学受験し、大学には推薦で入学しています。就職活動においても複数の企業からスムーズに内定をもらうことができました。

しかし、周りには会計士や弁護士等、将来の希望をもとに大学を選んだ人も数多くいました。NPOで活動したり、留学したり、在学中から目的意識をもって動いている人がたくさんいたのです。それに比べ、私は特にしたいこともなく、就職先もなんとなく決めようとしていました。そんな自分に疑問を抱くようになり、内定を全て断り、就職浪人することに決めたのです。

そして翌年、入社したのは外資系のコンサルティングファームでした。入社の決め手は会社の事業よりも、同年代の志望者たちに「生き方」に共感したからです。私にとって就職とは、学力や環境ではなく「生き方」が通じる人と一緒になる初めての機会でもありました。彼らが、自らの将来を語る姿に強いシンパシーを感じ、私も将来を自らの手で切り拓いていこうと、社会人としてのスタートを切ったのです。同期には、その後経営者になった人も多く、常に刺激を受けています。今でも「彼らに恥ずかしくない自分でいよう」と思える存在ですし、今に至る大きな原動力になってきました。

入社当初は能力の高い人たちに付いていくのに必死でしたが、仕事を覚えた３年目くらいから大きな転機が訪れました。

当時、ビジネスの世界ではインターネットの可能性に様々な議論がありました。そんな矢先、共に起業した当社取締役の山田が、趣味で化粧の情報を発信するメールマガジンを発行したところ多くの反響があり、「化粧品を選ぶ際、情報を得る方法が少ない」という実状を知ったのです。それがきっかけとなり、「ネットで化粧品の情報提供と販売をすれば、大きなインパクトがあるのでは」というアイデアが浮かびました。私はいてもたってもいられず、一週間徹夜して事業計画書を作成。数か月後には会社を辞め、化粧品・美容の総合サイト「＠ｃｏｓｍｅ」を立ち上げ、事業をスタートしました。

私にとって、就職浪人を経験したことが、人生を決めるうえで決定的かつ重要な判断になりました。社会は自分とは関係ないところで動き、流れに身を任せるだけ、という考えを変えるきっかけとなったからです。

とくに今の若い方々は、情報収集に優れ、知識が豊富な印象を受けます。しかし、それはともすると、世の中に対する受動的な姿勢につながることがあるでしょう。そこで気づいてほしいのは、ビジネスの環境は常に大きく変化しており、世の中が変われば、活躍する企業も大きく変わるということです。これから社会に出る方々は、自ら新しい時代のプレーヤーとなるべく、積極的に世の中に関わってほしいと思っています。